探偵物語 31

探偵日記 8月22日金曜日 晴れ

昨日は某所で勉強会があり事務所はズル休み。したがって、ブログもお休みした。勉強会が終わって、友人のお見舞いに行く。友人は同い年でゴルフ仲間。糖尿を患っているがそのほかは極めて健康で、ドライバーの飛距離も僕を大きく上回る。2年前、ハーレーを買って乗り回しているが、お盆休暇を利用して北海道にツーリングした。数十台で編隊を組み走る姿は壮観である。ところが、旭川で事故って仕舞った。17日のサンサン会をドタキャンしたので理由を聞くと、インターを出る時砂利でスリップして横転、大腿骨を骨折したという。20日、旭川病院から東京のリハビリ病院に転院したので顔を見に行った次第。ベッドでさぞかし痛がっているのかと思いきや、至って元気で、骨折したほうの足のつま先で立って見せる。ただ、ゴルフは来春までお休みするらしい。サンサン会のメンバーがまた一人少なくなった。
今朝は5時の目覚ましで起床。すぐにタイちゃんと散歩に出る。近所をうろうろして30分で帰宅。朝食の後、10時に事務所へ。今日は所長ともう一人の調査員が沖縄へ出張。明日あさっての2日間現地で素行調査を行う。結果や如何に。

探偵物語 31

2日後、報告書を持って依頼人の自宅を訪問。島根県の青年の家庭は、決して裕福ではないが円満で、両親や兄弟揃って穏健な人物達であった。ただ、青年の障害のレベルが想像以上に高く、結婚生活を送れるかどうか大いに疑問視された。迎える妻が健常体ならともかく、こちらも車椅子生活である。母親に聞くと、「娘も結婚は困難と判断したようで戻ってきました」と言う。(ところで報告書は届きましたか)と僕が聞くと、依頼人は笑って「来ませんよ」と応える。調査は、対象者が結婚相手として相応しくなかったため、二重の調査費用も無駄になってしまったが、地主で、近所にアパートを沢山持っている依頼人は「構いません。これからも娘の相手は必ず事前に調べて頂きますので宜しくお願いします」と言って、残金を精算してくれた。

数日後、事務所に居ると、事務の高ちゃんが(所長、赤坂警察からお電話です)と言う。何だろうと思って出てみると、生活安全課の片桐です。と自己紹介した相手が、「福田さん、島根県で身元調査をされたと思いますが、ちょっと事情をお聞かせ願えませんか」と言う。あの依頼人が、僕のアドヴァイスを聞き、所轄の赤坂警察に相談したようだ。相談を受けて、片桐氏がA社に問い合わせたところ、その翌日、慌てたA社から依頼人に報告書が届いたらしい。(そんなことならもっと早く報告したら良いのに)と思ったが、警察は、A社の報告書と僕の書いた報告書を比較したい。ということらし。承知して電話を切ると、依頼人からも電話がかかり「福田さん、頂いた報告書を警察に渡しても良いですか」と聞く。勿論結構ですと応え、A社はどんな報告をしてきたんですか?と聞くと、「たった3ページで、しかも福田さんのほうの報告書の内容と全然違うんです」と言う。さらに良く聞いてみると、本人や両親の年齢や名前、そして信じられないことだが、青年の健康状態の項には、健常体と書かれているらしい。依頼人は、A社に依頼するとき、せいていたこともあったが、自分の娘や相手の青年が障害者である事を告げていなかった。

さらに数日経って、赤坂警察に行き、担当者の片桐警部補と面談した。開口一番「酷い探偵社もあるもんだね~」と言う。机の上には報告書が二つ置かれていた。勿論その一つは僕の事務所のものだ。A社の報告書は形ばかり表紙はついているものの見るからに薄っぺらで、重みを感じさせないもののように見えた。赤坂警察にはかなりの数の相談が寄せられているようで、「詐欺事件」として立件したい様子だった。後日、要請を受けて、A社の報告書に対する同業者としての感想を文書にして提出したのだが。-------------