探偵物語 32

探偵日記 8月25日月曜日 小雨後曇り

朝4時55分に散歩に出たが霧雨が降ってきて、30分で切り上げる。タイちゃんも雨が嫌いなので進んで帰宅した。少しゆっくりして事務所へ。今日は沖縄に出張している調査員らが帰京する予定。報告書の表題を作ったりして準備をする。しかし、時間の経つのは早いものでもう8月も終わりに近い。残すところあと120日余りで今年も終わる。ただ、僕にとっては早く28年になってもらいたい事情がある。方位学の権威に(今が最悪の状態で、平成28年になれば好転する)と言われているからだ。おぼれるもの藁にも縋る。ではないが、何をやっても上手く行かない。やはり目に見えない力が作用しているのだろうか。などと考えてしまう。

今夜は、7時に銀座。顧問先から、「暑気払いをしましょう」と誘われた。銀座8丁目で食事して、久しぶりにクラブに行くことになろう。

探偵物語 32

しばらくしてまた赤坂警察に呼ばれた。行ってみると「A社のTを逮捕しました」と言う。罪状は詐欺。聞いて驚いた。何と被害者が2000人居たという。Tは、NTTのタウンページに広告を打ち、問い合わせてきた依頼人とは決して会ったりせず、総て電話だけで契約し、調査料の総額を振り込ませ、(あとは知らんぷり)というやりかたで、短期間で20億荒稼ぎしたらしい。広告料もほとんど払わず、しかも社員0人というからぼろ儲けだ。しかし世の中には凄い猛者も居るもんだと思う。確かに、やった振りをしていたずらに時間ばかり費やし、高額な調査料を請求する輩に比べれば、依頼人が騙され易い金額を設定し、場合によっては僕の依頼人みたいに(まあしょうがない)と諦める人も居ただろうから、シンプルである。ただ、前者は極めて狡猾で詐欺の認定は困難だがTの場合、まったくの「詐欺」そのものである。確信犯といってもよい。

担当の刑事さんは「福田さんの勧めであの依頼人が警察に相談し、こっちからTに、どうなっているんだ。って、電話したものだから、あいつ慌てて地図と電話帳を頼りに近所に電話をしまくって、あんな報告書を作ったらしい。」と呆れ顔で言っていた。Tは当然ながら実刑判決を受け服役したようだが、2000人の内立件できたのは僅かだったという。詐欺罪も近年は極刑に近い判決が出るが、Tの場合、3~4年程度だろう。バブル崩壊後に娑婆に出て、仮に15億円も残していたなら悠々と暮らせるはずだ。(悪い奴ほど良く眠る)という映画があったが、Tは安眠できているだろうか。----