探偵物語 34

探偵日記 8月28日木曜日 雨

4時40分、短パンとTシャツで散歩に出る。小雨が降っていることもあり寒い。一挙に秋が来たみたいだ。例によって、中央線の高架下に駆け込んだが、先客が3匹居てさあ大変。未明の住宅街に犬の咆哮が轟く。40分以上格闘して帰宅。普段の倍疲れたが昨夜早寝したせいか元気で早々に事務所へ。

事務所に着いて某所に電話をかけたら、(送信を拒否されました)と、それではと思いメールしたら(送信することが出来ませんでした)じぇじぇじぇ。これは大変だと思い、所長(息子)に聞くと、「料金払ってないんじゃあないんですか」と冷たく言い放たれる。僕の携帯は勿論事務所が支払ってくれている。じゃあ、事務の高ちゃんが忘れたのか?否、経理のおばさんが意地悪したに違いない。大急ぎで事務所の斜め前にあるドコモに行って2か月分、2億円余り支払う。貧乏探偵事務所では時々こんなアクシデントに見舞われる。

探偵物語 34

それにしても酷い探偵社だ。まだ20代前半の主婦、夫の給与は税込みで30万円。そんな依頼者に500万円もの借金を負わせる。聞いていて憤る前に情けなくなった。仮にも同業者である。H社の代表も良く知っている。決して仲良くしたい人ではないが、理事会やその他の会合で否応なく顔を合わせるし議論もする。時にはつかみ合いの喧嘩の寸前まで行ったことがある。

H社は解約には応じられないという。もしどうしても調査をやめるなら契約金額の60パーセントをよこせと言ったらしい。依頼人はその日の午後H社に解約の電話を入れている。しかし、「担当者が出ております」の一点張りで5日間経過した。その結果、「調査は進んでおります」との由。(じゃあ何処まで進んでいるのか、夫に女性は居たのか)と聞くと「それは秘密ですのでお応えできません」と。H社は協会とはお話できない。と言い張り、結局、主管に判断を仰ぐことになったが、H社も引くしかなかったのか僅かなお金で一件落着した。

そんなことがあって数ヵ月後のこと。協会内で内紛が起こり、一旦僕の役目も終了した。----------------