探偵物語 36

探偵日記 9月1日月曜日 雨

今日から9月、もう今年もあと120日余り、焦ってもしょうがない。最近はこんな心境になることが多い。それでも楽しいことは沢山あって、日々退屈することは無い。しかし、秋の長雨とは良く言ったもので、毎朝の散歩は数日間小雨に祟られている。タイも(なんだよ今日も雨か)という顔つきで、表情も本当につまらなそうだ。40分歩いて帰宅。
朝ごはんを食べてクリニックへ。例の「ギムネバ」のお陰で血糖値やヘモグラビンの数値は正常に保たれている。ただ、何時も言われることだが、アルコール性の数値と中性脂肪の値がやや高いので、「お酒は控えめに」だって。(笑)

探偵物語 36

マルヒは週刊誌を発行している出版社を数社回って、2日ほど東京に居て神戸に帰った。今度は神戸での調査になったが間もなく終了した。依頼人と、マルヒの依頼人との間で話がついたらしい。こちらの依頼人も想定していたことだが、当方の事務所の調査で、依頼人の妻とマルヒが接触したことで確信を持ったらしく破格の示談金で解決した。と、紹介者が説明してくれた。以後、尾行中の探偵にばれて、捕まった挙句殴られた探偵社からの要請で、かなり高額な調査を引き受けることになって忙しいひと時を過ごした。ただ、ほとんどの調査が神戸や大阪を中心としたものだったので、新幹線や宿泊費用が嵩み、行き来する調査員も大変だということになり、東淀川区内にマンションを借りて4~5人の調査員が寝泊りして行動した。車両もレンタカーでは目立つということで、僕の知人の斡旋で2台用立てて、この他、調査員の住民登録をマンションに移動させ、さらに1台確保した。山口県出身の僕は、大阪や神戸に知己が大勢居て便宜を図ってくれた。

しかし、いい仕事は長くは続かないもので、翌年の春には終了し、またもとの貧乏探偵事務所に戻った。その年の秋、K弁護士から呼ばれて弁護士事務所へ行って見ると、先客が有り、「こちらは探偵事務所の所長さんの福田さんです」と言って紹介され、まだ40歳になったかどうかというような女性と引き合わされた。彼女は石川県にある老舗の会社の専務と書かれた名刺をくれたが、今回は、その会社絡みの特殊調査で、聞いてみるとかなり複雑な案件のようだった。彼女、依頼人が退室した後、K弁護士は、「彼女の会社は石川県で、御三家の一つといわれる財閥会社で、今の社長、すなわち彼女のお父さんは6代目」だという。勿論東京にも支店があって、所有するビルに入居しているらしい。調査の目的は内部的なもので、まず、支店内に盗聴器が仕掛けられていないか確認することになって、よく日の土曜日、社員の居ない事務室を検査した。------------