探偵物語 41

探偵日記 9月9日火曜日 晴れ

やっぱり昨日の名月は見ることが出来なかった。早々に阿佐ヶ谷に帰り「えん家」で食事して、20時にはベッドに入った。しかしさすがに寝付かれず、夢と現の間を彷徨い4時に起床。まだ寝ぼけているタイちゃんを連れて外に出た。生憎の本降りで、傘をさして高架下へ。30分ほどで切り上げて帰宅。朝食を済ませて10時に事務所着。
朝の雨はすっかり上がって少し暑いが気持ちのいい秋晴れ、明日のゴルフ「二水会」も雨の心配はなさそうだ。

探偵物語 41

昨今、個人情報の取得が困難で、当然ながら今回のマルヒについても(銀行預金)の調査は難しい。とりあえず、債務者夫婦の夫の尾行を行う。小役人らしい真面目を絵に描いたような男である。こんな奴が、自分の住む家の建築代金を払わず、裁判所からの呼び出しにも応じない。そんな度胸が何処に有るのか多いに疑問を覚えた。役所の行き帰り何処にも寄らずまるで伝書鳩のようだ。一方、妻のほうは専業主婦らしいが、余り外出もせず時おり車で出掛けることが分った。調査員が撮って来た写真を見ると、夫とは正反対で、頑丈な面構えである。さてはこの妻の主導でごねているのかな。と考え、数日間の行動を見ることにした。食材の買い物のほか、金融機関を良く訪れる。多分取引銀行であろう数行を絞って、検索をかける。中には、1億円借り入れた銀行も入っていたが、夫、857円。妻、1000円の残高があるだけだった。その他の銀行も似たり寄ったりで、差し押さえする価値が無かった。

夫婦の名義にしていなければなすすべが無い。成人の子供が二人居るのでもしかしたら彼らの名義にしているのかもしれないが、当事者で無いので対象外となる。仮に、無収入の学生の口座に大金が入っていたとしても手出しできない。報告を聞いて弁護士もう~ん。と唸るばかり。この詐害行為を崩すのは容易ではない。

数日後、弁護士から笑いながら電話が入り、聞いてみると、「仕方が無いから給与の差し押さえ」を行ったところ、何と翌日全額支払ってきたという。「何がどうなってるか判らない」と弁護士。勤務先に汚点を残す前に支払いに応じればいいものを。と思うのだが、世の中色んな輩が生息する。----------------