探偵物語 40

探偵日記 9月8日月曜日曇り

散歩の時は降っていなかったが、食事を終えた頃、土砂降りの雨になった。4時半に出ておよそ一時間、駅周辺を歩き、まだ物足りなさそうにしているタイちゃんを(帰ってご飯食べよう)と水を向けて帰宅。食事までの2時間余りベットでうつらうつらする。

今日は中秋の名月(満月)の日。夜にはまた降ってくるらしいから月見酒とはいかないだろう。

探偵物語 40

こうして後輩や御大尽と暫くは楽しく遊んだが、バブルが崩壊した後、徐々に疎遠になって、歌舞伎町でも彼の姿を見ることは無くなった。莫大な資産もあらかた後輩の会社のものとなり、(山梨のほうに引っ込んだらしい)という風評を聞いて間もなく亡くなったという。何びとも栄華は続かないようで、彼の晩年も悲惨な状況だったようだ。かくいう僕とて、日々の生活は様変わりしつつある。まず、25年続いたクラブ通いも億劫になった。最近は、やむにやまれぬ義理で、時々は銀座や歌舞伎町に行くものの、面白くない。ホステスの甘い囁きも、媚態も心に響かない。そうして、色んな店に行ってもときめかなくなったのが最大の理由である。知人は「それが年齢なんだよ」と軽く言うが、それじゃああんまり淋しい。

私生活と同様、最近は、血湧き肉踊る。様な案件に巡り会わない。ほとんどが小規模で、難しい調査を予想させてもあっさり解決して(ハイおしまい)となる。余韻も無ければ心に残るような人間味のある仕事も少なくなった。僕の大好きな結婚調査や身元調査も、個人情報保護法のせいで、公簿の取得が困難になって深く掘り下げることが出来なくなった。ただ、軽蔑したくなるようなマルヒは多い。最近も、家を新築したが残金を払わないマルヒの調査を引き受けた。マルヒの住所は世田谷区の高級住宅地にあって、職業は某省勤務のお役人。不動産登記を見ると、建築資金として金融機関から1億円の借り入れを行っており、引渡し後に5千万円を工務店に支払う予定になっていた。しかし一向に払ってくれないので遂に裁判に持ち込まれたが、裁判所の呼び出しにも応じない。こんなことが勤務先に知れたら出世に支障するんじゃないかと他人事ながら心配してしまう。弁護士は「奴の給与を差し押さえてもいいんですが5千万円回収するのに時間がかかりすぎるんですよね~」と思案している状態いである。「銀行預金が分れば一番良いんですが」というのが調査の目的だったが。-----------------