探偵日記 11月05日水曜日 曇り
今朝は4時ごろ目が覚めたが、ドアの向こうにタイちゃんの気配がしない。彼も夜明けが遅くなったのでまだ寝ているようだ。30分ぐらいベッドで思案をめぐらせていたが、よし。と決心してタイちゃんの部屋を開けるとすぐに出てきた。4時42分外に出る。今日から少し厚手のシャツにしたがそれでも寒い。小一時間の散歩を終えて帰宅。また2時間ぐらい休んで朝食。9時50分事務所へ。
昨日、御茶ノ水の弁護士と話してて夫婦のことになった。弁護士曰く、最近は離婚が増えたらしいね。と言う。僕が相槌をうつと、我々世代のことになって、「熟年の別居が流行っている」という話題になった。聞いてみると、特に仲が悪くてそうするんじゃあなくて、合議の上で夫のほうが他所に移り住み、お互いに気ままな生活を楽しむのだそうだ。洗濯物等、1週間分を宅急便で妻の元に送り、また返送して貰う。僕は聞いてて、(じゃあ朝ごはんはどうするんだろう)と思った。弁護士の話をわが身に置き換えて考えてみる。僕は、何が有っても朝ごはんはしっかり食べたい。最近は朝ごはんを抜いて出勤する人が多いらしい。僕の知っている別の弁護士も(健康のために朝食を抜いている)「いやあ、快適ですよ」彼はそう言うが僕には信じられない。狩猟民族にせよ農耕民族にせよ、1日の始まりに空腹では頑張りが効かないのでは。と思うのは僕だけだろうか。少し話が逸れたが、土曜日の朝など女房孝行のために、朝食をロイヤルホストで摂る事がある。朝7時、開店と同時に店に入ると、続いて、熟年の男が数人やってきてモーニングを注文し、新聞等読みながら黙々と食べている光景に出会う。独身か妻帯者か不明だが僕は興味深く観察している。もし、僕が一人暮らしをするようになった時、果たして彼らのように毎朝ファミレスに通うのだろうか。朝ごはん命の僕は別居は出来ない。
娼婦 6
3回結婚して、二人の子供のいる佳枝が、ここがどういうところか判らないはずは無いし、男性とお茶したり食事に付き合うだけで1日数万円貰えるとも思わなかった。要するに、(デイトクラブ)だろうとは思ったいた。しかし、佳枝はそれで怯むどころか体の血が騒ぐのを感じ、(あのう、私は今からでも構いませんが)と言うと、男性は、「ああそうですか、じゃあやってみますか」と言い、他の女性が屯している別室に案内し、「今日から皆さんの仲間になった佳枝さんです。」と紹介した。午後になると事務所の電話が鳴り、ひとり減りまた一人外出して佳枝一人になった。所在無げにタバコをふかしていたら、また電話が鳴り、男性が「新人が居ますのでAさんのお気にいると思います。じゃあすぐに向かわせますので宜しくお願いいたします」と言っている。(私の番だわ)と思った途端、身体が熱くなった。
男性の指示どおり、駅前のホテルに行き、フロントで部屋番号を告げると、どうぞ。と言われ指定された部屋に向かった。
その日は、同じホテルに3回行って45,000円受け取った。3人目の客は体臭が強く嫌だったが何とか我慢して終えた。結婚して13年、夫の宏之は53歳。もうほとんど佳枝を相手にしなくなっていたから、見知らぬ男でも大いに燃え、夫には感じなかった快感を覚え、押さえるのにひと苦労だった。翌日は10時きっかりに出勤して責任者の男性に大いに喜ばれた。源氏名は「佳樹」にして、毎日5~6人の客の相手をし、5日間でチップも含め50万円の収入になった。夫や夫の両親には友達の店を手伝うことになったと説明。(普通の喫茶店で、たまに遅くなる日もあるけど宜しくお願いします)と付け加えたが、毎日9時頃には帰宅するようにしたため、家族に怪しまれること無く、気がつくと2年余りが過ぎていた。-----------