探偵日記 3月9日月曜日 曇り後大雨とか
昨日、日曜日の月例は散々だった。冷たい小雨の中スタートしたが、リズムが悪いとはこういうことを言うんだろう。何をやっても上手くいかなかった。午後のスタートホール。短いサービスミドル。会心のショットで残りは100ヤードもない。バンカー越えだが、今更バンカーを怖がるようなキャリアではない。(上手く寄せてバーディでも)と思って打ったら、何とトップしてグリーン奥へ。キャディは「大丈夫でしょう」と言ったがマーカーが見に行き〇を作られた。難のことはないOBである。練習場では10回打ってもピンそばのショットがコースではこうだ。もうゴルフはやめた。と、昨日は思った。しかし、今月は、11日、15日、22日、29日と後3回予定がある。
今朝はタイちゃんの散歩を1時間やった。8時に朝食を頂き10時に家を出る。今日からまた1週間が始まるが、週末にホワイトデーがあるので忙しい。
新宿・犬鳴探偵事務所 7-6
午後1時、犬鳴は結婚式等で有名な椿山荘に併設して開業したホーシーズンホテルのロビーに居た。少し遅れて、妙に周囲を気にしながら依頼人が現われ「ここではゆっくりお話が出来ないので部屋にいらっしゃって」と言われる。犬鳴は日頃、顧問弁護士から(犬鳴さん。依頼人とは絶対個室で会わないように。その人が貴方と別れて、犬鳴という探偵に脅された。と言って警察に駆け込まれたらアウトだよ。何故ならば、そんなことは言ってない。といくら抗弁しても、普通の人と探偵では分が悪い)というのが弁護士の意見であった。そのあたりは、犬鳴きも十分承知していて、危険を感じた場合は胸のポケットにテープレコーダーを忍ばせていた。
命じられるまま依頼人に伴われ部屋に入る。今日も依頼人は一人で、最初の夜一緒に居た男は見当たらない。やがて、ルームサービスのコーヒーが運ばれ依頼人の話が始まった。
「ねえ、犬鳴さん。警察にお知り合いいらっしゃる?」(ええまあ)「ご相談なんですが、私が指名手配されてないかどうか調べていただけないでしょうか」(分りました。伝を使ってやってみますがオーナーの本名と生年月日をお聞きすることになりますよ)「ああ、そうでしょうね。ところで、お礼はいかほど差し上げればいいでしょうか」犬鳴はちょっと考えた。顔見知りの刑事は沢山居る。しかし、署轄外の事件である。それほど簡単ではないはずだ。ただ、彼らは数年置きに転勤があり、また、警察学校の同期や同じ土地の出身で親しくなっている者も居るだろう。そんなことを思い巡らせ、いくらって言ったらいいかなあ。と、逡巡していたら、すると、依頼人の女性が「3000万円でいかがでしょうか」と言ってきた。オイオイちょっと桁が違うんじゃあないの。と思った犬鳴だったが、勤めて平静を装い(承知しました努力してみましょう)と応じる。
だらしないことに、犬鳴はその夜なかなか寝付かれなかった。依頼人は、「じゃあ明日従兄弟に持って上がらせます。何卒宜しくお願いします。」と言っていたが、本当に持ってくるだろうか。何だか感覚のずれている女性だから、一晩寝て気持ちが変わったりしないだろうか。それでもうとうとしたらしく、定刻にぼんやりと起きだし、朝ごはんはしっかり食べて、期待と不安が交差する複雑な気持ちで防衛庁前の事務所に向かった。
午前9時30分、曙橋の事務所に到着。何時もと変わらぬ朝である。三々五々出勤する調査員達も普段と変わらない幸せな顔をして、何が楽しいのか嬉しそうに談笑している。責任者が、こんなにドキドキそわそわしているとも知らずに。
やがて正午になった。みんなはランチに出かけたが犬鳴はとてもそんな気になれず、調査部長に1万円渡し、(俺は後でいいから行っといで。)と言って、留守番役に回った。みんなが出て行って間もなくドアのチャイムが鳴る。犬鳴が出ると廊下にひょろっとした若い男が立っていた。(どちら様ですか)と聞くと、「あの~オーナーの使いでこれを持って参りました」と言いながら大丸デパートの紙袋を差し出した。(まあこんな所ではなんですから)と言って招き入れる。若い男は、探偵事務所なんかに来た事もないだろう。おどおどした感じで、それでも興味深そうにきょろきょろと室内を見回している。事務も居ないので仕方なく犬鳴がお茶を出し、(領収書は?)と聞くと、「いえ結構です。オーナーもそうは言ってませんでしたから」と言う。犬鳴は、紙袋をチラッと見て、1昨日と同じ古新聞に包まれている束を確認し、(確かにお預かり致しましたとお伝え下さい)と言う。若い男は、長居は無用とばかりにそそくさと帰っていった。ーーーーーーーーー