探偵日記

探偵日記 3月30日月曜日 晴れ

今日は、先週の金曜日検査した結果を聞きにクリニックへ。「福田さ~ん」と呼ばれて恐る恐る診察室に入る。ドクター「だいぶん数値が良くなっていますが努力されましたか」ぼく(いいえ、極端なことをするとかえって変だと思い何も)とはいったが、毎朝のご飯を三分の二に減らし、コーヒーにお砂糖を入れなくしていた。ただ、毎晩飲むお酒の量は相変らずだし肉や脂っこいものを好んで食べた。先月、中性脂肪が1000を越えていたのに、今回は88。糖尿のヘモグラビンも前回6,5だったのが6,2.ドクターも言うことがなく「お酒の量を減らすことは出来ませんか」だって。実は昨夜も、ビール、紹興酒、焼酎、ウイスキーとチャンポンしてしたたかに酔ったが、(ハイ努力します)しおらしく応えてクリニックを後にした。

新宿・犬鳴探偵事務所 9-2

 Sに寝返ったWは、講頭に逆恨みした挙句、あること無いこと告げ口した。かねてより、本山とSの間に入って、理不尽なSの攻撃を防いできたN講を快く思って居なかったSの幹部らはWのもたらした情報を鵜呑みにして、このときとばかりに戦いを挑んできた。その争いが、東京地方裁判所に於ける「損害賠償訴訟」である。言って見れば、犬鳴探偵事務所はとんだとばっちりを受けた格好で、いわれの無い濡れ衣を着せられたのだった。しかし、民事裁判というもの、ひとたび訴えられたら何が何でも応戦しなければならない。仮に、自分に関係のないことだ。として、呼び出しに応じなければ(欠席裁判)で、原告の主張が認められ、犬鳴探偵事務所は1億円の支払い義務が生じる。ただ、Sの狙いは、ちっぽけな貧乏探偵事務所ではなく、あくまでも日蓮宗の総本山であり、時の上人、日顕その人と、関係の宗門である。というわけで、好むと好まざるに関係なく犬鳴探偵事務所も被告の一人として法廷に引きずり出されることとなってしまった。

 数回目の公判の時、S側の代理人である弁護士が、いわゆる実行犯と位置づけている犬鳴探偵事務所の責任者を「証人」として呼びたいと提起してきた。勿論、被告側がこれを拒むことは出来ず、某月某日裁判所から出頭命令が来た。その書類には、午前10時から午後4時まで「証人尋問」を行うとある。(ふざけんな)と思ったが、N講とは、すでに十数年の付き合いで、少なからず恩恵も受けている。向こうは6人の弁護士チームでやってきている。当方も、それなりの弁護団を編成していたので、数回のシュミレーションを行い公判に臨むことになった。なお、今まで10回以上開かれた公判は総て傍聴券が配布されている。何のことはない。双方の信者達が応援合戦を繰り広げているのだ。当日は、60枚の傍聴券に対し、その数倍の人数が東京地方裁判所の中庭に集まって券を奪い合う。

 その日がやって来た。部屋は701号法廷。入って右側に我々の被告席。左側に原告の弁護団が陣取っている。裏切り者のWも、Sで用意してくれた東大での弁護士とともに被告席に座っていた。犬鳴は、傍聴券を取らせた調査員数名を法廷に入れていたので、開始前、Wを指差して、大声で、(オイみんなあれがWさんだ。良く顔を覚えておけよ)と言って、Wを威嚇した。Wは目を大きく見開き、今にも席を立って逃げ出しかねない素振りをする。小心者のWはわざわざ裁判所に警備要請をしていた。犬鳴にしてみれば、長年寵愛を受けたN講頭を逆恨みの挙句、あからさまに裏切ったWを決して許さない。という意志を伝えた次第である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー