探偵日記

探偵日記 6月01日月曜日 晴れ

今日も暑くなりそうです。昨夜、ゴルフ帰りに(今日はお酒を抜こう)と思い自宅近くのデニーズで食事。帰宅して車をガレージに入れようとした時電話がかかる。事務所には代表電話が2本あり、不在の時外線が入ると僕の携帯に転送されるようになっており、もう一本は所長に転送される。電話に出ると(おばさんみたいな)女性からで、「ご相談ですが今大丈夫でしょうか」との由。(大丈夫ですよ)と応じたが、(もし調査のご相談でしたら伺いましょうか)というと、「そうしてもらえると助かる」みたいなことなので、疲れた足を引きずって、じゃあない、体に鞭打って赴いた。聞くと、「神田の南口に居る」らしい。(遠いなぁ)と後悔したが、「ある人の紹介で」と言われては放っとけない。時間は夜8時20分、カーレースみたいな走りで8時47分目的地に到着。

会ってみると30歳半ばの女性。電話の時、少し言葉が変だなと思っていたら外国人だった。1年前、初めて会った46歳の日本人男性に(結婚を前提にお付き合いしたい)と言われて交際が始まり、「好きになってしまった」が、会うのは昼間だけ、夜になると大急ぎで帰るし、電話やメールも通じなくなるという。「もしかしたら結婚している人じゃあないか」と、思い始め悩んでいたら知人に(いい人を知っている)と言われて電話をかけてきたようだ。

僕は言った。(調査をするまでも無い。調査をしたところで、貴女が夢見るような結果は出ないからすっぱり忘れて次に進みなさい)と言って別れた。(夜は絶対に会えないし、電話もメールも出来ない)恋人同士なんかいるわけない。---------------

教師と教師 1

小山内信雄は東京に隣接する某県の職員である。年齢はちょうど50歳。勿論妻や、高校生と大学生の男の子も居て、質素だが円満な家庭を営んでいる。と、数ヶ月前までは思っていた。妻は自宅に近い中学校の先生。したがって、同じ県の職員同士ということになり、揃って地方公務員である。妻は勤務の関係で帰宅が遅くなることが多いが、担任するクラスを持っていれば何かと忙しいのだろう。そんなふうに考え、子供や自分の夕飯を用意することにも何ら違和感を覚えずむしろ進んで「主夫」の役割を買って出ていた。信雄は身長160センチ位。痩せていて小男の部類に入る。性格も控えめで穏やか、人と争うことなど全く無かったし、夫婦仲も極めて睦まじい。近隣の住民の評価は大体そんなところであった。一方、妻の真理子は46歳。上背があり、肥っているというほどではないが肉感的で、全体に男好きのするタイプと言って良いだろう。しかし、日々の生活は隙のないもので、職業柄かやや堅めな印象を周囲に与えていた。

ただ、いくら仲睦まじい夫婦とはいえ、結婚して20年を越えたあたりから夫婦の営みが疎遠となり、2年前から寝室も別々になった。しかし、信雄は、職場の同僚達の話からも(まあそんなものだろう)と思っていたし、妻のことを露ほどにも疑ったりしたことは無い。ところが、そんな或る日のこと。県の仕事帰りに、部下の運転する車の助手席に乗っている時、自宅からも勤務する学校からも離れた町のコンビニエンスストアの駐車場に停められている妻の車を見た。ーーーーーーーーーーーーー