探偵日記 7月24日金曜日 晴れ
今朝は散歩だけして、ジムはお休みした。事務所に行く前、歯医者さんに寄って治療。奥歯にかぶせ物をするため型を取ったりして、阿佐ヶ谷駅に行くと電車が止まっている。何でも、代々木駅の線路に人が入ったらしい。結局、17分遅れて新宿駅に着いた。人騒がせな奴もいるもので本当に迷惑だ。
れんげ 15
八重垣神社から楓の家のある方向にはまだ多くの田畑があり、近在の農家がそれぞれ得意とする野菜を育てている。藤代家のように、働き手の無い家ではあまり手のかからないものを細々と作るが、若い百姓は都心に向け出荷出来る確かなものを栽培し家計としている。そんな中に、野口家があり、やまといもの出荷では、付近の農家と大きな差をつける出荷量を誇っていた。ところが、野口家の当主保夫が悩みに思っていることがあった。毎日のように出没するもぐらである。折角、(明日あたり切りとろうかな)と思っていたら、その晩、広範囲に食い荒らされる。ことがしばしばであった。特に、秋から冬の初めにかけて彼らの働きも旺盛になり、色んな防御策を講じるが何時ももぐらに負かされ悔しい思いをしていた。そんな或る日、妻の幸子に(トラバサミでも仕掛けようか)と相談すると、幸子は、その罠に間違って子供が挟まれたらどうするの。と、猛反対された。保夫も暫くは妻の言い分をもっともと思い躊躇していたが、被害は毎日のようにあり、しかも日々酷くなってくる。やむをえず、反対する妻を説き伏せ、子供達が入ってきそうな畦に、キケン入るなと書いた看板を立て、一番被害の大きな場所に数箇所仕掛けを施した。ーーーーー