探偵日記 6月11日木曜日 晴れ
テレビの天気予報で、帰りが遅くなる人は傘を持って出たら良い。と言っていた。もの凄く疲労感を覚えるので、今日は早く帰宅して家でゆっくしようかな。と、今は思っている。今週から始めたジム通いも今日で3回目。昨日はゴルフで、今朝タイちゃんの散歩を終えて、ジムに直行、きついマシンを5つこなし、プールで25分歩いたり泳いだりした。ゆるやかにやろうと思っていたが、性格は直らない。ちょっとむきになって体を苛めている。
教師と教師 8
子供達を交えての家族水入らずの夕食は久しぶりのような気がする。他愛の無い話題だがこれが家庭のあるべき姿なんだろう。もしかしたら近いうちそれも無くすかも知れない。この段階では仕方の無いことだろうが、真理子は屈託の無い笑顔を見せ信雄にしきりと話しかける。もしかしたら、そんな態度で夫の内面を伺っているのかもしれない。俺って奴は本当にネガティブな人間だな~と、考えながら、それでも今のこのアットホームな雰囲気を壊したくなかった。明日の夕方には、犬鳴探偵事務所の調査員が妻を尾行し、翌日にはその結果を知ることになろう。探偵の犬鳴と自分の推測が間違わなければ妻の裏切りが明白となる。小山内信雄はその夜まんじりともせず朝を迎えた。
出勤すると、急ぎの案件が入って、県下の支所まで出向くことになり、2時間かけて部下の運転する車でI県に近い支所まで行き、トラブルを解決して勤務先に戻ったのは夕刻になった。お喋りの部下の話に相槌をうったり、支所での仕事のお陰で、妻のことを考えずに済んだことは何よりだったが、自分のデスクに座った途端、今頃妻はどんな状況なのか急に気がかりになった。探偵からはまだ1度も連絡が来ていない。妻はもうとっくに勤務先の中学校を出ているはずだ。少しでも状況を聞きたい欲求にかられ何度か携帯を手にしたがすんでのところで思い留まった。勤務先を出たが家に帰る気になれず、建築会社の資材置き場のようなところに駐車して待つことにする。
小山田は夢を見ていた。妻が数人の男達に囲まれ泣き叫んでいる。許して、とか、助けて。と言っているらしいが良く聞き取れない。やがて男達は妻を無理やり車に押し込んで走り始める。助けなくては、と思い手足を動かそうとするが思うように行動できない。(そうだ、警察に通報しよう)と思ったところで目が覚めた。車の中でシートを倒し横になったため眠ってしまったようだ。そういえば昨夜は一睡も出来なかった。そのうえ、長距離を移動したため疲れも出たのだろう。それにしても嫌な夢を見たな~と思い時計を見ると、車を停めてからまだ1時間ほどしか経っていなかった。ぼんやりしていると、携帯の着信音が鳴り、慌てて出ると、探偵からのものだった。穏やかな声で、探偵の犬鳴は「小山田さん、僕らの思ったとおりでした」と言った。---------------