探偵日記

探偵日記 6月12日金曜日 雨のち曇り

仲介業者の三井不動産住宅リースからやっと回答が来た。内容はにべも無いもので、「お返しできません」というものだった。賃借人である僕の会社が差し入れてある「敷金265000円」を、ほとんど汚れていない部屋に対し、何が何でも理不尽極まりないクリーニング代216000円を請求して、相殺すると言う。まさに、部屋を明け渡してから70日以上経って、態度を鮮明に表明したわけである。誰もが(高い)という現状回復費用を、(妥当な金額だ)と言って譲らない。大企業の傲慢さを見た思いである。親しい弁護士に話したら「費用なんか要らないから俺の任せろ」と言ってくれた。まあ、ただというわけにもいかないだろうから、結局265000円は会社に戻らないだろう。持ち主の東電不動産からは、僕の2度にわたる手紙の返事は無い。その代り、同社から物件の運用を任されている三井が戦いを挑んできた次第である。皆さん大手は怖いですよ。

教師と教師 9

詳しいことは後日。と、探偵事務所の責任者は言うが、小山内は一刻も早く聞きたいと思い、(じゃあ、妻は男性と会ったのですね)と聞いた。「はい、小山内さんが目撃したというコンビニで、男の車に乗り換えてラブホテルに入りました。」と。ただ、二人はまだ出て来ないので相手の素性等はこれからの調査になる。とも言った。小山内も当然だろうと思った。男の車で行ったのならナンバーも控えているだろうから、いずれ相手の住所等は判るだろう。男とホテルに入った事実さえ聞けば自分が疑問に思っていたことの90パーセントは解消した。後はこの事実をどう受け止めるかである。妻との離婚は避けられないかもしれないが、子供のことはどうするか。しかし、小山内は不思議に思った。今この時間、妻は他の男に抱かれている。そう思いながらまったくと言って良いほど嫉妬は感じなかった。

探偵に妻の素行調査を依頼しようと思ったときから観念していたのだろうか。1を知って10を知ったのだろうか。あの日、妻の車をコンビニで見て、自分は今日のことを悟って居たのかも知れない。貞淑だとばかり思っていた妻の裏切りには腹が立つ。しかし、探偵も言ってたように、調べるまでも無く今日の結果は分っていたはずだ。(そうであってほしくない)淡い期待を抱いて過ごしたこの数日。世の中、そんな都合のいいことは無いのだ。「相手の男の身元や、奥さんとの馴れ初めとか、交際期間なども可能な限り調べますので4~5日待ってくれますか」と言う探偵に(分りました宜しくお願いします)とこたえて、今後修羅場になるだろう家に向った。ーーーーーーーーーーーー