探偵日記 11月13日金曜日 晴れ
今日は13日の金曜日。欧米では不吉な日とされている。多分、同名の映画の影響だと思うが、無神論者でその他諸々の因習に囚われない僕には関係ない。今日も多分素晴らしい1日になるだろう。雨さえ降らなければ。
昨日、例によって歌舞伎町の雀荘で麻雀をしていたら事務所から連絡があり、九段の法律事務所のA先生が電話をくれ。との由。エレベーターホールに出て電話すると、「今、ご依頼人がいらっしゃってるんだけど話を聞いてくれないか」と言う。勿論、喜んで市ヶ谷に向かった。依頼人は中年の男性。55歳の妻が浮気をしているらしいので尾行をしてもらいたい。とのこと。最近の女性は元気だ。
おもろい探偵たち その2)新米探偵B 1
四谷の老舗探偵事務所に一人の男が応募してきた。時はバブルの真っ最中。文字通りネコの手も借りたいぐらい多忙を極めていたので即決で採用した。年齢23歳。名前は「御子柴蘭磨」面接に当たった調査部長が(カッコいい名前だね。それに珍しい)と言うと、蘭磨君ニッコリ笑って「ええ、皇室に縁のある家なんです」えぇえ、調査部長は大層感激して、改めて履歴書を見直した。奈良県出身で、どういうわけか警視庁に入り刑事をやっていたらしい。(ふ~ん、どうして辞めたの)と聞くと、「実は山岳部に所属していまして、或る日槍ヶ岳に登ったのですが部員の一人が滑落して途中で宙ずりになりました。助ける術もなく、僕が上司の命令で射殺したのですが、まあ、その責任を取って」とおっしゃる。へ~そんなこともあるのかな~と思ったが、とにかく忙しくて人手が欲しい時のこと、ましてや、我が国の皇室に繋がるお家柄のお方である。三顧の礼を持ってお迎えしなければならないぐらいの人かもしれない。(何時からお仕事に就いていただけますか)部長は言葉遣いも変えてお願いしたところ「まあ遊んでても体が鈍っちゃって仕方ないから明日からでも」ということで、野良犬集団みたいな探偵事務所に、後光がさすような探偵が誕生した。-----------------