探偵日記 12月22日金曜日 晴れ
前の日にちょっと飲みすぎたので昨夜は早めに阿佐ヶ谷に帰った。といっても、我が家は365日外食なので家に帰ってもご飯にはありつけない。仕方なくというか、何時ものように、飲み屋が並ぶ(スターロード商店街)を歩き、とある一軒の店に入る。勿論馴染みの見せである。まだ時間が早かったせいか運良く入れたのだ。店の名前は「海舟」名店である。勝海舟を思わせるマスター。いい男のうえ腕も一流。生小1杯、ひれ酒2合、焼酎ロック1杯飲んで、つまみは、ナメタガレイの煮つけ、五色納豆、かき酢、天ぷらみたいなもの、〆にづけ丼を食べて帰宅。
今日も早めに家を出る。阿佐ヶ谷の駅のホームで忘れ物に気付きUターン。伊勢丹に寄って事務所へ。
結婚詐欺師 3
ここで丸の内のA弁理士先生のプロフイールを書く。彼は兵庫県姫路市の出身の48歳。忠臣蔵で有名な赤穂藩藩主浅野内匠頭につながる家系。というのが自慢。横浜大学卒業後、東大院に進み弁理士の国家試験に合格。とにかくお利口さんなのである。父親は地元の高校で教鞭をとっていたとかいないとか。たった一人の姉は四国の某県の大学の教授である。毛並みはすこぶるいいのだ。4年前に離婚した時(真っ赤な嘘なのだが)妻に2億円の慰謝料を支払ったらしく、収入もメチャクチャいい。背も高く、いわゆる未婚の女性が望む、3高(高学歴、長身、高収入)全て備わっている。B子さんでなくとも絶対に離したくない超のつく優良な相手。本人もそうした、自分に備わっている好条件を意識しないわけも無く、女性との会話の中に巧みに織り交ぜ口説いている。
しかし、探偵の僕に言わせればバカ丸出し。院で法律を勉強しただろうになんてことをするんだ。僕は山口県の貧困の家庭に育ち、成長過程も逆境続き、果てには野良犬みたいな探偵稼業。勿論、男性的魅力に乏しくお金も無い。僕は常々人に言う(金のない中年男なんかボロ雑巾みたいなもの)と。でも、ご心配なく、僕はめっぽうもてる。何故か?答えは(嘘をつかない)からである。ここ数十年、知り合った女性に「僕は独身」なんて言ったことは無い。むしろ、相手に勘違いされないように強いて、それとなく家庭の話をする。余談だが、それでも結婚してくれ。と言われる。僕は弁理士先生のAに言いたい。なぜ、そんなすぐにばれるような嘘をついたんだ。と。しかしこうも考える。Aは平凡な交際では物足りない「変態」で、(もしかしたらやっと結婚できるかな~)と喜ばせておいて、手のひらを返すように振る。ことに快感を覚えているんじゃあなかろうか。表現は悪いが、疑似餌に食いつく罪のない魚を釣って喜ぶように。だから今彼は「放置プレー」を楽しんでいる。-------