探偵日記

探偵日記 04月02日月曜日 晴れ

今朝家を出て駅に向かう途中、或る住宅から一人の男性が出てきた。年のころ50歳ぐらい。スーツにランドセルのような鞄を背負って俯き加減に駅方向に向かう。僕は心の中で、(いくら辛いことがあったって自殺なんかするなよ)と、声をかける。まあ、これは妄想癖の強い僕の一人合点だが、最近の男は弱すぎる。事務所で今そんな関係の案件を抱えているための連想である。もう少し歩くと路地に若い女性がぼんやりと立っている。携帯でメールでもしているのかな。と思って、通り過ぎる際に何気なく観察した。その女性は何もしていなかったし、体調が悪いようにも見えなかった。ただ、道端をじっと見つめ放心状態である。(鬱かな)と思わせた。探偵にとって興味深い状況で、もし暇だったら様子を見たいと思うが、予定もあり、もうそんな元気も無いので事務所に向かった。

結婚詐欺 P2

ちょうど乗り換えのため新宿駅に降りたばかりだった村瀬は恐る恐るその結婚相談所に電話をしてみた。すると、責任者と名乗る女性が、「これからパーティが始まるところです。すぐいらっしゃったら」と言われ、山手線の恵比寿駅近くの会場に赴いた。パーティといっても十数人の男女が居るだけで、他愛もない会話を交わしているだけだったが、塩月と名乗るくだんの責任者が村瀬をみんなに紹介し、その後、一人の女性を村瀬にひきあわせた。女性は、ごく普通の会社員に見え、着ている物も地味な印象で、村瀬も少しばかり安心した。その日は小1時間ほどいて、酒の飲めない村瀬はウーロン茶を1杯飲んだだけで、会費と称する1万円を塩月に払って帰宅した。その前に、勿論、塩月に言われるまま自己紹介の書類にいろいろと書いて渡した。すると、次の日から村瀬の携帯に、まず、塩月から、次に、紹介された会社員風の女性からじゃんじゃんメールや電話が入り、翌日喫茶店を指定され塩月を交えた3人で「特別お見合い」を設定された。今まで女性と二人きりで喫茶店に入ったこともない村瀬は、心を躍らせながらその喫茶店に向かったことはいうまでもない。その日のお見合いが「婚約成立」となり、以後、連日塩月に呼び出され「彼女貴方のことをすごく気に入ったみたい。1日も早く結婚したいって言ってるけど、どうする」「婚約指輪も用意しなくちゃあね。まあ、それは私のほうで、特別に知ってるお店があるから紹介するわね」もう村瀬は何が何だかわからず、美人で優しい塩月にすべて任せるしかなかった。