貧乏探偵の思い出

僕が探偵になった昭和43年ごろは、その数も少なく、大外の事務所は「職業別電話帳」(当時、日本電電公社発行)に小さな広告を出し、ただひたすら待つだけの業態だった。僕が初めて勤めたT探偵社は千代田区西神田にあって、所長はNさん。当時40歳位だったか、なかなかのハンサムで、渋みのある「これぞ探偵」と思わせるような人だった。まだ開業したばかりだったので、調査員第一号が僕、元妻(後で知ったのだが)が事務員面接を受けたその日から「福田君今日から仕事できる?」と言う。採用された喜びと、すぐに探偵になれる意外さに大いに興奮した記憶がある。N所長が僕の左腕を見て、「この時計を使いなさい」と言って、皮ベルトの千円か二千円の時計をくれた。マルヒ(調べる相手、難しく言うと被調査人)について詳しく説明され、夕刻5時、マルヒの経営する会社の入居するビルの前に到着。直ちに張込を開始する。かっこいい。だけど、所長は別の案件で他方へ、優秀なプロの探偵は僕だけ、2日続けてあっという間に失尾(尾行中見失いまかれる事)その後、社長さんの不倫相手の秘書さんに「貴方の顔は一生忘れないからね」と怒られた。 続きはまた明日