朝10時、関西から上京してきたK社長と面談を済ませ事務所に戻ってきた。もう、10年を越すお付き合いで、多種にわたるご依頼を頂き、探偵冥利に尽きるような経験もさせてもらった。老舗企業の何代目かの若い社長だが、いざという時の胆力もあり、発想も素晴らしいものがある。僕にとって、最高のクライアントと言える。さて、昨日の続き、貧乏探偵の話だが、N所長のT探偵社に新入社員が入ってきた。前歴はタクシーの運転手。やはり採用されたその日から名探偵になり、僕と一緒に会社社長の不倫調査をすることになった。現場に向かうため、追跡用の車に乗ったとたん、ハンドルを握っているYさん(僕より3歳上だった)に僕は思わず言った。「Yさんタクシーに乗ってたの」って。Yさんは驚いたらしく、「どうして分かったの」と言う。これで、二人の関係は決まったらしく、以後、Yさんはず~と僕の弟子になった。(笑)まあそれはともかく、以来三十数年の付き合いとなった。調査員が二人になったおかげで、とんとん拍子に調査は進み、新宿のラブホテルに入った二人のツーショットをカメラにおさめ一件落着。しかし、依頼人の希望で、その後も繰り返し調査を続けたため、不倫相手の秘書さんから「貴方の顔は一生忘れないからね」って、怖い顔で怒られたのである。