挫折

今日は土曜日。良く晴れた週末である。しかし、探偵にお休みは無い。と、僕だけは思っている。だから、事務所には僕一人。事務員も調査員もだーれもいない。10時30分事務所着。早速郵便物を読んだりしたあとパソコンに向かう。机の右横に孫の美佑の写真が立てかけてある。7歳の時のもの。お振袖を着てちょっとはにかんだ顔が何とも言えず可愛い。しかし、この子ももう11歳。身長が150センチを超えたらしい。ここで、数ヶ月前に終了した「不倫調査」を思い出した。マルヒ(調査対象者、いわゆる被調査人)は、大企業に勤務する超エリート社員、年齢36歳。こんな年でもう将来の役員候補と噂されているほどの逸材。相手の女性は勤務する会社の主力取引先に勤務する26歳の女性。しかし、ただの女性ではない。100年続くその会社のオーナーの孫娘である。オーナーは当然財界の要職にも就いており知らぬものは無いぐらいの超大物である。加えて、マルヒの勤務する会社は総売り上げの35パーセントをその会社に依存していて、仮に、オーナーの孫娘を愛人にしていることが発覚したら取引を解除されることは必至で、勿論、エリート社員の将来は無くなる。悪いことは出来ないもので、やがて、周囲の知るところとなって、エリート君は免職となり、大物会長の孫娘は、エリート君の妻から多額の損害賠償を求められる羽目となった。しかし、僕が奇異に感じたことは、エリート君、着のみ着のままで社宅を飛び出して以後、まだ3歳の娘と会おうとしないばかりか、幼稚園の 運動会も、お誕生日も、クリスマスも、全く知らん顔を決め込み挙句の果ては、娘のために積みたてて居た学資保険まで解約して、1円残らず持ち去ったと言う。開成高校から東大法科に進んだおりこうさん。何を学んだのでしょうか。昔、「不倫は文化だ」と言ったタレントが居た。確かに、既婚者でも配偶者以外の異性を好きになることはママあるし、更に深みに堕ちる場合もあるだろう。しかしである、男たるもの、一定の責任と、妻子に対する優しさだけは捨てないで欲しい。エリート君、君の我欲のために二人の人生が大きく歪曲してしまうかもしれないんだよ。ということで、人は、何処に大きな落とし穴が待ってるかもしれない。そういう覚悟が無いなら不倫はやめよう。