探偵日記 11月19日木曜日 晴れ
今日はボジョレーの解禁日。例年そうなのだが、今年も友人の店で味見することになっている。僕は特別ワインが好きという事ではないので、まあ義理に顔をだすわけだが、その後、顧問先に銀座に呼ばれている。9時、八丁目の高級クラブR。お目当ての子も居ないし、まさか顧問先が良く行く店ではしたないことも出来ない。結局、当たり障りのない会話をしておいとまをする。ママ曰く「福田さんって、女性に対して本当にがつがつしてないわよね~」だって。トホホ
おもろい探偵たち その 2)新米探偵 1-4
責任者は部長に、「ここまで嘘で固めるような奴は即刻首にしろ。まあ、良く吟味しなかった方も間抜けだったけどな」と棄て台詞を残して事務所を出て行った。古い付き合いの部長は、日頃温厚で、調査員の失敗もほとんど怒らない所長の剣幕に首をすくめた。
翌朝、元気一杯に出勤して来た蘭磨君を応接室に招き入れ、昨日からの経緯を説明して釈明を求めた。すると蘭磨君、不思議そうな顔で部長を見つめ「何のことですか。僕は嘘なんかついていませんよ」ときた。部長も怒って、「ふざけんじゃあないよ。どこの世界に11歳で大学に入り、15歳っていやあまだ未成年だぞそんな子どもを警視庁が雇うわきゃあねえだろう」と怒鳴りつけた。しかし、当の本人は動ぜず「部長は飛び級って言葉ご存じないんですか」と嘲笑った。ここに至って部長もあほらしくなったらしく「まあいい。名前が違うぐらいなら目をつぶろうと思ったが、お前いさぎの悪い奴だなぁ。事務所の鍵を返して出て行け」で、一件落着した。
それから7~8年経った頃、「すみません。調査員を募集してませんか」という電話がかかりまた部長が面接をした。履歴書を見ると、名前は(山本宏)2,3の探偵社に勤めた経験がある。その時も人手が欲しいころだったので、採用するつもりであれこれ聞いてゆくうち(あ、こいつ御子柴蘭磨だ)と気付いた。というのも、蘭磨君の容貌が一変していたことと、事務所の名称も漢字からアルファベットに変わっていた。蘭磨君もまさかあの時の探偵事務所と気付かず応募し、部長もうっかりした次第。「わかりました。じゃあ責任者とも相談してあとでお返事いたします。」と言って帰した。その頃の蘭磨君はもう30代の半ばだっただろう。あれからずっと探偵稼業を続けていたのならもうベテランである。事務所では一時期その話題で盛りあがったが、みんなが忘れた頃、グループ会社のJの所長から電話があり、「昔そっちにいた奴を採用したんですが変なんです」と言う。どう変なの?と聞くと、(自分は皇室に縁のある家柄で東大を出ている)と言って、他の調査員を馬鹿にするらしい。加えて、(臭いんです)と言う。それからまもなく「首にしました」という報告が入った。いつまでも新米探偵のままである。------------------