探偵日記 02月08日土曜日 晴
7時起床。朝食の後、9時前にゴルフの練習に行く。練習ではちゃんと打てるのにどうしてスコアに結びつかないのか。150球ぐらい打って帰宅。すぐにシャワーしてクリニックへ。さらに西武線「中井」駅前のクリニックへとはしごして歌舞伎町へ。夜はお定まりのコース、居酒屋大福で食事の後カラオケスナックへ。なんと、10000歩以上歩いた。
新宿・犬鳴探偵事務所 2-8
犬鳴は依頼人の言った言葉の意味を十分承知の上で、敢えて返事をせずに夫人を見返した。これまでも何度かそんなことを言われたことがある。しかし、大半は冗談半分で笑いあって終わった。今まで、色んな依頼人から4~5回相談されたが、当然ながらすべて断ってきた。一度など、担当者が着手金として5000万円受け取ってきたこともあったが、苦心して返したこともあった。ただ、犬鳴はこう考える。勿論そんな物騒な依頼は引き受けるつもりもないが、にべもなく断るのも能がないし、自分を頼りにして縋りつく依頼人の(生きる希望の灯)閉ざすのも可哀想な気もする。残念ながら、犬鳴のこれまでに人生の中で経験はないが、この種の悩みに特効薬はない。さらに深みに嵌れば、暗く長いトンネルから抜け出せず自殺を考え、実際に実行に移す危険もある。誰かが言った(探偵とは人の不幸に立ち会う職業である)だからこそ、そのトンネルの出口を探し、再出発の手伝いをすることも必要ではないか、と。依頼人、柳原夫人は言う。「私は、あの女が主人の子を産んで、私の子と同じレベルで生きてゆくのは許せません。お金は前もって用意します。」と。
夫人なりに考え抜いた結論なのであろう。翻意させるのは困難のように思えた。都内で名の知れた総合病院を経営する彼女の実家は相当な資産家でもある。まさか、娘が殺人を犯すために用立てたりはしないだろうが、可愛い娘に無心されれば2億円を出すのも大した苦労ではないだろう。・・・・・・