探偵日記

探偵日記 02月07日金曜日 晴

午後6時、阿佐ヶ谷に帰ってきて友人と落ち合い3時間食事し、昔話に花が咲いた。その後、スナックのはしごをして0時帰宅。それなりに有意義な一日だった。
韓国に出張していた関係者から帰国の連絡が相次ぐ。次回は僕も参加しようと思う。
話しは変わるが我が家のコピー機、ブラザー製だが劣悪だ。朝、依頼人に渡す書類を印刷しようとしたが上手くいかない。仕方なく、中途半端なものを持って行ったが、今、ということは14時間後に印刷された。まったく仕事にならない。メーカーは、こんなユーザーに対し何を思うのか。カスタマーセンターとやらに電話してもたらい回し。みなさんブラザーは要注意。

新宿・犬鳴探偵事務所 2-7

翌日、珍しく事務所に居た犬鳴は、最近、他の探偵事務所に勤務していたところを、無理を言って迎え、調査部長をしてもらっている池辺を誘って歌舞伎町に飲みに行った。彼は、年齢こそ犬鳴より上だが、業界では、犬鳴が若い頃修業した探偵事務所の後輩である。一見すると元刑事と見紛う要望で、3憶円事件の指揮を執った、(落としの八兵衛)こと、平塚八兵衛によく似た男だった。無類の酒好きで、飲むと、ポケットに入っているお金をばらまきながら歩く癖があり、それさえ注意していれば一緒に飲む者としてうってつけの男だった。ぶらぶらと歌舞伎町に向かって歩き、伊勢丹まで来た時(ああそうだちょっと腹ごしらえしてから行こう)と思い立ち、明治通りに面した新宿文化会館の中にある会員制クラブ「エスカイヤクラブ」に入った。同店は、今どき珍しいバニーガールが接待してくれ、全国どの店に入っても自分のボトルが出てくることを売りにしていた。
入ると、黒服のマネージャーが慇懃にあいさつし、バニーちゃんに案内あれて席につこうとしたとき、(犬鳴さん)と呼ぶ声がした。声のしたほうを見ると、銀座で事務所を持っている男が女性と食事していた。
その日の正午頃、くだんの依頼人が日課となっているように事務所に訪れた。最近の柳原夫人は大人しい。特に今日は、思いつめたような顔をしていた。犬鳴の部屋に入りソファに座ってもうつろな表情でぼんやりと犬鳴を見つめるばかりである。犬鳴が、(どうしたの今日は元気ないじゃあない)と、軽い調子でご機嫌を伺う。犬鳴にしてみれば大切な依頼人ではあるけれど、時々、自分の妹か娘のように思うこともある。勿論、依頼人にしてみれば大金を払って雇っている探偵をそんな対象には見ていないだろうが、犬鳴のほうは夫人を労わるような気持であった。
短い沈黙の後、夫人は、犬鳴の顔を見て薄く笑い、「ねえ、犬鳴さん2憶出すからやってくれない」とつぶやいた。・・・・