探偵日記 03月06日水曜日 曇り
06時40分、朝食をすませ、08時前に家を出る。今日は09時、大切なご依頼人と都内のホテルで面談の予定。10時20分、東京簡易裁判所へ。裁判所玄関のチェックでビービー音が出て綿密に調べられた。携帯、ベルト、万年筆、鍵。幸い拳銃は家に置いてきたので大事に至らず入館できた。「少額訴訟」探偵を50年以上やってきたが依頼人を相手に訴訟をおこすなんて初めてである。昨年報告した件で依頼人の社長は全く支払いの意思が感じられない。社長は、会社の若い女子事務員を好きになり、高じて嫉妬するようになった。昨年からさんざん調査を行ったが極めて品行方正な女の子でボーイフレンドもいない。前の調査料もゴネにゴネて苦労させられた。堪忍袋の緒が切れた僕は、(少額訴訟を起こしますよ)と警告を発したがナシの飛礫。要するに「馬鹿」なのである。会社の業績は順調に推移。彼にしてみればどうということのない額の調査料をケチる。やがて、裁判沙汰になって会長である父親の耳にでも入ったら一大事だ。昔気質の会長は決して許さないだろう。そして何より、裁判所から会社に訴状が届く事実を認識できないんだろうか。二代目はダメ。とはよく言ったものだ。そういえばどっかにもいたな~
本郷の開業医の依頼で娘とその家族の調査が始まった。都心から2時間ほどかかるK県の不便な場所に住んでいた。娘の夫も医者でマイホームを得てはた目から見るとアットホームな感じだった。家族全員の顔写真を撮り、夫の勤務先や子供たちの通学先も確認した。特に何もない平凡な家庭である。或る日、中間報告を兼ねて依頼人の自宅を訪問。探偵がそこで見た光景は・・・