探偵日記 05月06日月曜日(振替休日)曇り
長いGWもようやく今日で終わり。もし計画通りだったら今頃山口から帰る途中で、中央高速の大渋滞に巻き込まれているだろう。しかし、帰省しなくとも充分疲れた。そして最終日の今日、娘を交えての家族会議、いろんな意見が出たけれど結局まとまらず、僕は早々に逃げ出した。
明日からまた通常の日々が戻って来る。ただ、当分は気の休まらない日が続くだろう。身体も酒の飲みすぎだろういくら寝ても疲労が取れない。心身ともにボロボロとはこういうことか。
詐欺師k 12
それからはまた僕とkの仲が復活。毎日のようにお互いの事務所を行き来した。kから見れば全く利用価値のない僕だが、自分が優位に立てる相手で、何を言っても喜んで聞く僕が可愛くもあり、いっときの安らぎになったのかもしれない。僕のほうも好奇心が人一倍強いほうだからKの騙しの手口を見聞きするのが楽しく、また、本業のためにもなると考えた。「調査」は基本的には「人」の吟味であり、対象者を判断するうえでそのマルヒの性向を判断するのにkは格好の教材になった。当時kは、100枚以上のサラ金のカードを持ち、さらに増え続ける勢いだった。そして、詐欺ったお金でご相伴にあずかる僕も、時に、共犯になったような気にもなったが、勿論、まっとうな手段で稼いでいる僕がおごることもあった。とにかく面白いのである。kやその一味は、事務所に来るとまず電話帳を開き、その日の自分を決める。例えば、練馬区に住む佐藤一郎になろうとすると、その人物の住所に基づき、勤務先を、自分たちが作った「児童情操研究所」が発行したように見せかけた社員証、保険証、給与証明書、などを偽造、その人の自宅の最寄り駅を調べ、駅からの経路を覚える。当時のサラ金会社は、唐突に干支を聞いたり、駅から自宅までの徒歩経路を書かせたりしたらしい。これらを準備万端整えて金融会社に赴くのである。詐欺も実は骨の折れるものらしい。或る時kが自慢した。同じサラ金の同じ店舗に、佐藤、田中、斎藤、になりすまし融資を受けたという。(それで変に思われなかった?)と聞くと、kは「メガネをかけたり、髪の形をちょと変えるだけでOKだよ」と。