探偵日記 05月07日火曜日 晴
皐月らしいお天気。何はともあれ爽やかな気持ちで家を出る。所用を済ませて正午事務所に着いた。
今日から平常の生活に戻る。僕はお休みが嫌いだ。とにかく毎日仕事がしたいし、体を動かしていなければ落ち着かない。これは単に貧乏性なのだろうが、「探偵」には必須の条件かもしれない。
と、勝手に解釈している。したがって、何も予定のない日が一番辛い。そして移動の合間に文庫を読む。内容が佳境に入ったりすると下車駅のホームか構内で立ったままで読みふける。
事務所のメールに後輩で探偵ののE君から、最近書いたという本の宣伝が入った。勿論早速紀伊国屋で買って読むつもり。
詐欺師k 13
しかし、当たり前だが悪事はそうそう上手くいくはずもなく、k等の所業が発覚した。聞いてみると、名前を使われた或る人のところにサラ金から督促の連絡が入ったらしい。その人はさぞかし驚いただろう。早速、kの会社に事情を聞きに訪れた。問答無用で、言い訳のしようもないだろうと思ったが、そこは詐欺師の面目躍如で、(子供が難病でやむにやまれず)とかなっとか言って、そら涙を流しその場は何とか凌いだらしい。ところが、サラ金各社はそんなに甘くない。電話はひっきりなしにかかって来るし、人相の悪い男がやってきて、美人の事務員を脅し、ドアに(金返せ)とか(詐欺で警察に訴える)など書いた紙を貼ったりした。怖くなった事務員はさっさとやめて行き、kやkの相棒も姿を晦ませた。ところが、そこは三流の悪党で、事務所を借りるとき本当の住所を書いたため自宅にも大勢の債権者が押し寄せ、帰るに帰れなくなってしまった。僕に言わせれば、そんなことより警察が怖くないのか。と思ったが、サラ金も名前を使われた人たちも訴え出ようとしなかったらしく、結局、何となく逃げおおせた。
数日後、kから「ふくちゃん頼みがある」と言われ、何だろうと思って喫茶店で会うと「埼玉県の某市に部屋を借りた」と言う。頼みというのは、引っ越しを手伝え。ということで、僕は今までの経緯から快諾した。その当日、トラックを借りて、深夜kのアパートに赴き家財道具を運び出し逃亡先のアパートに納めた。「布団と位牌だけでいいんだ」といっていたkだが、いざ部屋に入ると、あれもこれもと言い、きれいさっぱり空になった。世の中、色んなものがあって、夜逃げする人専用のアパートも沢山有るとか、その夜はとても疲れたが貴重な勉強にもなった。・・・・・・・