探偵日記

探偵日記 09月07日土曜日 晴

今日は何の迷いもなく「晴」と書ける。但し、これといった予定もなく、外出はするが天候にはほとんど影響されないことばかり。まず、調査員と会って今後の打ち合わせをした後、ちょこっと麻雀して、夜は毎週の行事みたいになったカラオケ。好々爺に交じって、やはり高齢のご婦人たちと馴染みのスナックで懐メロを歌う。これが僕の長生きのための秘訣の一つ。やって来るのは毎週ほぼ同じメンバーである。

探偵の調査で、定番は「素行調査」のための張込尾行だが、長期になるとやや危険を伴う。まあ、危険といっても身の危険などサスペンスドラマで見るようなことではなく、マルヒに感づかれる恐れのこと。これは、調査員の失敗というより、不可抗力に近いものが多い。例えば、同じハイヤーを使う役人とか、企業のお偉いさんの場合、ハイヤーの運転手に余計なことを言われる。「社長、あの車なんだか変ですよ」などと、マルヒの危機感を煽られる。当然、脛に傷を持つマルヒは、ギョッとして後ろに注意する。すると、3台後についてる当方の車両を認知し、以後、それとなく注意されることになる。探偵のほうも車やスタッフを変えて対応するが、ひとたび警戒されるとやりにくいこと半端ではない。或る時、地方の出張から帰京する人物を尾行した時、羽田からタクシーに乗ったマルヒを追ったことがあった。これは後で依頼人の奥さんから聞いたのだが、乗ってすぐにタクシーの運転手がマルヒに(お客さん後ろの車に尾行されてますよ)とチクったらしい。当然ながら、この日の調査は不首尾に終わった。まあ、マルヒの注意もそうそう長続きせず、後日(動かぬ証拠)を掴み無事終了したのだが、世の中余計なことをする人もいる。