探偵日記

探偵日記 09月18日水曜日 晴

昨日は久しぶりに小田急線に乗って「成城学園前」駅に行った。新宿のホームで停車中の急行に乗る。下北沢を過ぎ、ふと社内の電光板を見ると、次の停車駅は「登戸」となっていた。あれおかしな?と思ってよく見ると、この急行は何とか急行で、僕の行く成城学園前には止まらないようだ。成城と言えばセレブの住む町でお偉いさんも沢山いるはずだから、どんな電車も止まるはず。僕の悪い癖の一つで「思い込む」と周りが見えなくなる。「探偵」にあるまじきことである。しかし、登戸で降りて引き換えし何とか目的地に着いた。昼下がり超高級住宅街を歩くのもいいものだ。右を見ても左を見てもため息の出るような邸宅が立ち並び、その中の一軒がマルヒの関係者の家であった。
ただ、人のことは分からないもの、この大邸宅に住む人やその家族が幸せに暮らしているかどうか誰にも分からないだろう。表面的な部分を見る限り何の瑕疵もないファミリーなのに、そしてみなそれなりの生活を営んでいるのに、その実態は決して人に知られてはならないものだし、知られる可能性はほとんどなかった。探偵の調査線上にひっかからなければ。・・・・・

昨日、僕は調査部長に電話をかけ、或ることを指示した。「この件、他に誰が知っているか。もし知らなければ今後絶対に言うな」と。探偵生活50年以上の僕でさえ(え~)と思ったぐらいの調査結果だから若い調査員はもっと驚き、或いは関心を抱くかもしれない。マスコミに持ち込めば、ン十万円の謝礼を貰えるかもしれない。仮にそうしてもマルヒや依頼人には大きな影響なないはずだ。だがしかしである。それをやった段階で、その男は「探偵」失格となる。