探偵日記 11月24日火曜日 晴れ
寒い朝だった。明日(ゴルフなのだが)はもっと寒くなるらしい。今日は予定が入っているので、朝食の後早々に支度を済ませて家を出た。9時半ぐらいには事務所に着けるはず。と思っていたら、例の如く中央線が乱れ、何時もの3倍以上かかって10時着。車内では車掌がしきりに(申し訳ありません)と連呼するが、謝って済むからお気楽なものだ。一般社会で生きている我々は、何事も謝罪だけでは許してくれない。昔、十河信二という国鉄の総裁が居たが、大船あたりの東海道線の沿線に住んでいた総裁は、夜遅く汽車の汽笛を聞きながら、(ああ、こんな時間まで勤務している者もいるんだなぁ)と、感慨に耽り、自らの励みの糧にしたらしい。昔は、責任感の強い無骨な人が大勢居た。
おもろい探偵たち その 3 あぶない探偵C 1-3
同僚は、Cは何しに署内に入ったんだろう。と、思っていたら間もなく出て来たCは、同僚に「うん、トイレを借りた」と言った。出て来たCに立ち番の警官が丁寧に敬礼したので、同僚が「誰か知ってる人が居るの」と聞くと、「いいやそんなことはないよ」と言い、ああそうだ。と言いながら立ち番の警官の所に行き何やら話している。車に帰ってきたCの手元に、マルヒの相手男性の氏名と住所を記したメモがあった。
また或る日のこと、吉原のソープランドの店に、ホステスの身元調査に行ったCは、横柄な態度で、「支配人を呼べ」と告げ、出て来た支配人に、例の偽造した警察手帳を見せて、「従業員名簿を持って来い」と、居丈高に命令したものだ。現代ではそんなことでびびる支配人も居ないだろうが昔は結構通用したようだ。またある時、歌舞伎町でしこたま飲んだCと同僚は、店のホステスを送っていくと言い、車に大勢乗せて走り始めたが、職安通りのガードで酒酔いの検問に遭遇した。同僚は(万事窮す)と観念したが、運転をしていたCは、ミラーを下げ、手帳をかざし、呂律の回らない言葉で「ご苦労さん」と言って無事通過した。
そのCも、一時は手広く探偵事務所を経営していたが、バブル崩壊後、(暴力団のお金をつまんだ)ようで、今は、風の便りにも聞かない。-------