探偵日記

探偵日記 令和2年元旦 晴

みなさん明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

昨日の大晦日そんなに飲みすぎたわけでもないのに二日酔い気味。多分肝機能が一縷しく低下しているのだろう。やはり体調のすぐれない女房にびーるを勧められたが断って、お雑煮だけたっべた。
元気だけが取り柄の僕も今年は76歳になる。そろそろあっちこっちガタが来てもおかしくない。その前にせめて後一冊出版したいと考えている。したがって、宣伝を兼ねて腹案の「新宿・犬鳴探偵事務所」を連載で書いていきたい。山陰の鄙びた漁村で成長した「犬鳴吾朗」が主人公。昔、大学は出たけれど。という映画があったように記憶するが、昭和42年3月、吾朗もそんな感じで阿佐ヶ谷の、家賃7500円のアパートの一室で、確かな目的もなく刹那的に生活していた。

新宿・犬鳴探偵事務所 1

下関と京都を結ぶ山陰本線は、途中、萩や松江、出雲や鳥取砂丘を経て進むが、山口県西岸の美しさは格別だ。中でも、玄界灘の小灘である響灘に落ちる夕日と、本線を走るみすず号(山口県出身の詩人で、26歳で早世した金子みすゞにちなんで命名した観光列車)から眺める海や、はるかに望む島々のたたずまいは情緒あふれる。同じ日本海でも、北陸や東北のそれとはやや趣が異なるが、しかし、冬になれば穏やかだった海も荒波が押し寄せ、吹きすさぶ海風とともに漁師を苦しめた。
始発駅の下関から、うら寂しい単線を小1時間走ると雑木の混じった松林が見え隠れし、その合間に幾つもの小さな漁村が顕れる。綾羅木、吉見、小串、湯玉、二見、特牛、対岸が朝鮮半島ということもあって、かの国に因んだ地名が多い。海岸から鉄路に向かって、なだらかな山がせり出し、その間の僅かな土地に、漁師らの粗末な塒が肩を寄せ合うように建てられそれぞれの集落を形成している。そうした静かな漁村も、収穫の朝、魚が引き上げられるいっときは、澄み切った空気を裂くセリの声が聞かれ、1日の始まりを告げ、それが終わると港は死んだようにひっそりと佇む。・・・・