探偵日記 01月17日金曜日 曇りのち雨とか
昨日、姉の墓参に。行った。姉は僕より3歳上、67歳の若さで亡くなったから今年は13回忌か。凛々しいというと女性に対する評価としては少々変だが、まさに、その形容が似合う人だった。高校は山口県下でNO1の下関南高。途中、家の事情で東京の都立青山高校に編入。その後、青山学院に進みOLを数年した後あっさり結婚した。挙式の前夜、一緒の部屋で寝たが、しみじみとした感じで「私は本当はあんたのような男と結婚したかったけど、冒険しないであの人を選んだのよ」と言う。まだ学生だった僕にはその意味が分からなかったが、結果的に堅実な人生を選択したようだ。サラリーマンと結婚し、子供に手がかからなくなってからは、僕の事務所の経理を引き受けてくれた。もう少し生きていて欲しかったと切に思う。
新宿・犬鳴探偵事務所 17
そんな或る日、犬鳴が独立する前、ちょっとの間勤務していた探偵事務所の元同僚で千代田区一番町に事務所を構えている柏原と言う男が、「ワンちゃん、今度東京都調査業協会ってえのが出来るらしい。今日説明会があるっていうから一緒に行ってみないか」と、誘ってきた。ちょうど暇を持て余していたところで、(いいよ)と応じると、じゃあこれから行こう。ということになって二人で事務所を出た。柏原の言うことによると、今日の午後1時に半蔵門会館で初会合が開かれるらしい。(ずいぶん急だな)と思ったがそういえばそんな内容の案内状が来ていたことを思い出した。半蔵門会館は皇居に近く、警察関係者が良く利用するところである。我々の業界には警視庁のOBが多く、その関係でここに決まったのだろうと察した。
二人が顔を出すと、すでに、4,50名くらい来ていただろうか、中には何んとなき見知った顔もあり、社名だけは聞いたことのある事務所の責任者もいた。柏原は以前からかかわっていたようで、みんなに犬鳴を紹介してくれた。驚いたことに、それらの人たちのほとんどが、犬鳴の事務所を知っていて、中には、「あの有名な犬鳴さんですか」などといいながら握手を求める者もいた。犬鳴も他愛ないもので、すぐに入会の書類にサインした。
そうこうするうちに、警視庁(東京の業者は警視庁の指導を受けるようだ)の総務の担当者も来場し、「みなさんが一つになって団体が出来れば、主管としても応援し、業法の成立に向けて努力を惜しまない」などと挨拶した。したがってこの日の会合は、警視庁の音頭で開かれたものらしかった。さらに、この日の重要事項として、新しくできる協会の役員人事があり、理事の選出が行われ、当時池袋に事務所を持っていた本田探偵事務所の本田治の推薦で、柏原と犬鳴も理事に就任した。・・・・、