探偵日記

探偵日記 12月17日火曜日晴れ

今日も寒い朝。ただ、昨日酒を抜いたので目覚めは快適だった。特に用もないのに早めに支度をして事務所へ。探偵に限らず人には思わぬ幸運に巡り合うこともあれば、アクシデントや不運に遭遇することがある。昨日は、そういうことが重なり合う一日だった。悪いほうは、折角受件した仕事が途中で挫折したこと。良いほうは、のどに小骨がひっかかっているような、気がかりだった案件が解決しそうなこと。等だが、思えば自分のこれまでもそんな感じで70年過ごして来たような気がする。大きくも、或いは部分的にも。良いほうは、子供を4人ももうけながら、僕が生まれて間もなく離婚して、僕を棄ててどこかに消えた素晴らしい両親の子供として生まれたこと。そのお陰で、山口県の人情豊かな漁村で成長したこと。探偵という天職に出会えたこと。男女を問わず色々な人たちと出会えたこと。人並みに結婚し、少々出来は悪いが子宝に恵まれたこと。最近でこそ、病院の陰謀に篭絡され、やれ糖尿病とか高血圧等と言われクスリ漬けにされているものの、概ね健康を維持できている事。などなど。悪いことは忘れる性格なので、私的には良いことばかり。(笑)

昨日、久しぶりに業界の先輩「原田」氏から電話を頂いた。何事かと思って出たら、「テイタンの廣嶋澄雄さんが亡くなった」と言う。廣嶋さんは、草創期の東京都調査業協会の初代会長を務めた人で、名実共に業界の重鎮であり、人物的にも尊敬に値する人だった。まだ77歳という。喜寿を迎えたばかりで誠に残念。というほかない。テイタンは、昔は「帝國秘密探偵社」と称し、規模の大きい会社だったから同社の出身者は多い。主業は採用関係の身元調査だったので、純粋な探偵社とは多少異なるが、僕も一度同社とバッティングしたことがある。依頼人がテイタンと僕の事務所に同時に依頼したのである。訃報を聞いてそんな昔のことを思い出した。原田先輩には(じゃあ通夜に参りますのでその時に)と言って電話を切ったが、さぞかし盛大な葬儀になるだろう。小林旭の歌の文句ではないが、どうでもいいのが残って、いい奴ばかりが先に逝く。(合掌)