探偵物語 28

探偵日記 8月11日月曜日 晴れ

週末は台風の影響で悪天候。特に用事も無いので外出を控え一日中家でゴロゴロ。そういえば最近こんな日が多い。今までは用事も無いのに新宿へ行き、麻雀をするのが癖だったが、年齢のせいかそれも億劫になってしまった。
今朝は、まさに台風一過の好天気。朝4時45分、タイちゃんを連れて外に出ると名残の風が僕達を包む。短パンにTシャツでは少々寒いぐらい。秋の気配を感じる朝だった。
明日から、郷里の山口へ帰省する。13日に同級生らとゴルフをするだけだが、GW以来の故郷の海や山を見るのが楽しみである。何時もは、ゴルフの後、下関の東急インに泊って、東京の歌舞伎町みたいな「豊前田」という繁華街で食事するのが決まりだったが、今年は、ゴルフの日程が「海峡花火」の日と重なってしまい、下関はおろか小倉のホテルも予約で一杯とのこと。仕方なく我が家に二泊することになった。それと、何時ものと違うのは、車で帰らないこと。我が家の皇太子愛犬タイちゃんの調子がいまいちなので、僕だけ新幹線で帰る事になった。車中、本でも読んでゆっくり帰るのもいいだろう。来週の月曜日、18日に顛末をご報告致します。

探偵物語 28

というわけで、受け付けた苦情の、あまりの高額な調査料に驚いたが、A社から返金させた225万円でも高額である。組合の理事長のポン友と、かって、僕の事務所で調査部長をしていたが当時はもう独立して事務所を持っていたNと僕の三人で札幌の飛び、(乗る飛行機も宿も分っているので先回りした)札幌グランドホテルに部屋を取ってロビーで待機した。16時、マルヒがロビーに姿を見せ、チェックインを済ませ部屋に上がる。Nが追尾して部屋番号を確認したが、慎重なマルヒが女性を部屋に連れてくることはないだろう。相手の女性も、依頼人の推測どおりなら人妻である。

17時過ぎにマルヒが部屋から出てくる。服装はホテルに入ったときと同じ。何も持たず身軽になって、まず、近くのデパートに入った。女性に何かプレゼントデモするのだろうか、ハンカチーフ等の売り場を熱心に見て、何やら買った。その足ですすき野へ。情報によれば女性は札幌市内で、夫や子供と生活しており、マルヒが訪問する得意先の一社に勤務しているという。マルヒは女性の退社時間に合わせて行動し、午後6時、とある日本料理店に入った。7時半、30歳後半の女性を伴って出てくると、タクシーを拾って郊外のラブホテルに直行。およそ3時間過ごし、最寄の駅で女性を降ろして、マルヒはホテルに帰った。ポン友と僕は女性の身元を確認するため再び女性を追尾。まもなく、一見の小洒落た住宅に入ったことを確認し、本日の調査を終了した。

何でもない極めて簡単な素行調査である。マルヒは東京から遠く離れた札幌での行動を(誰も注意するものは居ない)とばかりに、堂々と動き回り、一方の女性も、月に数回の逢瀬を誰にも気付かれないと安心しきっていた。僕たち三人は、折角北海道まで来たのだからと千歳空港近くのコースでゴルフを楽しみ帰京した。相談者イコール依頼人に報告すると「別れさせて欲しい」とのリクエストがあり、ポン友の組合理事長が単身北海道に飛び、相手女性を説得して、(もう二度と会いません)という誓約書を書かせて、本件は、完全に落着した。

こうしたやりかたは非弁行為に抵触する懸念はあるが、W不倫で双方共に守らなければならないものを持っている。第三者の忠告で納まる。と、我々は思っていたし、ポン友は依頼人にも、相手の人妻にも大層感謝されたらしい。-------------------