探偵日記 9月25日木曜日雨
今日は給料日、この日と月末が最も嫌いな日になってから40年以上経つ。それでも、大半はなんという事もなく過ぎたが、バブルが崩壊した後の1~2年と最近は頭が痛い。昨日、タクシーに乗ったら運転手がぼやいていた。夜12時を過ぎたらまったくお客がいないという。ということは、バーやクラブなどの飲食店や風営店が暇な証拠である。アベノミクスもまだまだ末端には浸透していないようだ。今日僕のお給料くれるかな?(笑)
恋愛ごっこ 6
それからの妻は演出家が驚くぐらい陽気で活動的になり、また一段と美しくなった。そうなると男も身勝手で、何となくOに嫉妬すら覚えた。しかし、Mとの関係を失うほどではなく、どの時期にOから報告が入るのか待ちどうしくもあった。ところが、或る日を境に妻の様子ががらりと変わった。沈みこむ日が増え、夫の呼びかけにも気付かないほど茫然自失の状態に陥ることも多くあって、明らかに心に鬱積を抱えている様子が見て取れた。演出家は、Oに連絡をして様子を聞こうとしたが、Oの所在が不明で、団員に聞いても、皆知らないというばかり。演出家は訳が分らず悶々とする日が続いた。しかし、Oからこの話を持ちかけられてちょうど1年ほど経った或る日、妻が(少しお話があるのですが)と切り出され、聞いてみると(貴方と別れたい)というものだった。演出家は「遂に」と思い喜びを隠せなかったが、気を取り直して「どうして?」と尋ねた。妻は多くを語ろうとしなかったが、(貴方に何の落ち度もない。むしろ悪いのは私のほうかもしれないが我儘を許して欲しい。強いて言うなら人生をやり直したいの)と言って、事実、その翌日に長年暮らした家を出てしまった。
妻は、Oから愛の告白を受け暫くは拒絶の態度をとり続けたが、Oは決して諦めず折に触れて接触してきた。偶然がこうも重なるものかと不審に思うぐらい、自分の行く先々にOが現われ、自分が望むような行動をし、喜ぶようなプレゼントを贈られた。映画も(僕も是非見たいと思っていました。偶然貴方に会えて幸せです)と言いながら、同じ映画館で会うことも何度も有った。もし普通の家庭に育った女性なら「何か変だな」と感じたかもしれない。しかし彼女は温室育ちで免疫がない。次第に、若くてハンサムなOに惹かれて行った。こうした場合の女性は、まさに、一気呵成に感情をほとばしらせるものかもしれない。1年が経とうとした頃には、もうO無しでは一日も生きてゆけないぐらいOに傾倒した。そして或る時を境にOからの連絡が途絶えた。----------------