探偵日記

探偵日記 10月27日月曜日 晴れ

今日から暫くは晴天が続きそうである。水曜日、栃木県今市市まで所用で行かなければならず、雨だと嫌だな。と思っていたので良かった。家人は、「ついでに日光の紅葉を見てきたら」と言うが、元気が残っていたらのことで、多分そうはならないだろう。僕は、桜の時はスルーするが、紅葉はゆっくり見たいと常々思っている。桜のはかなさより凛とした紅葉の艶やかさを好む。
朝4時に起きてタイちゃんの散歩。1時間歩いて帰宅。一日の一大イベントが終わった感じでぐったりする。体調は日光の手前、(今市ーいまいち)

娼婦 3

佳枝の前に現われたのは東京の郊外に住む独身のサラリーマンでMといった。小柄な佳枝に比べると大男に見える体格の良い男性だった。しかし、少々軽薄な男ばかりを相手にしてきた佳枝は、一途な感じのこの男性を鬱陶しく思っていた。2度の離婚を経験し男性経験の豊富な佳枝は、いかにも子供っぽいMに何の魅力も感じなかったが、男の機嫌ばかり取っていた頃と違って、今度は自分の言いなりになるMは都合の良い男だった。当時の佳枝は江戸川区に住んでいたので、Mとは間逆の方角で、仮に、銀座に迎えに来ると、Mは、ゆうに2時間を所要することになった。送迎の間、車の中で交わす会話を唯一の楽しみにしているようなMを軽蔑しつつ、反面、湯加減のいいお風呂にのんびり浸かっているような心地よさも同時に感じるようになり、1年後、意を決したMが、突然佳枝の両親の元を訪れ「佳枝さんを下さい」と直談判したことで、あっさり結婚が決まった。

3度目にして挙式も行い晴れて夫婦となったMと佳枝は、Mの給与ではアパートに住むことも出来ず、Mの父親が将来を考えて建て替えたばかりの2世帯住宅で新婚生活をスタートさせた。Mの父親は大企業の役員まで勤めた人物で、謹厳実直を絵に描いたような人だったし、母親も手堅い女性だった。最初、Mが「この人と結婚したい」と言って佳枝を紹介した時は、少なからず難色を示した父母だったが、ただ大人しいばかりでうだつの上がらない一人っ子のMがやっと見つけた相手だからと、気がすすまぬまま承諾した経緯がある。やがて、長男が誕生し、2年後二男をもうけ、最初は様子見を決め込んでいたMの両親も、佳枝を認めざるを得なくなり、家事の一切を佳枝に任せるようになった。学校は公立でいいんじゃあないか。という夫に対し、「絶対に私立に行かせたい」という佳枝との間でひと悶着はあったが、「学費その他は私が何とかします」と言う佳枝の迫力に負けて、二人の子は揃って有名私大の付属に入学した。夫や、夫の両親に対し、学費等は私の実家で用立てる。と大見得を切った佳枝だったが、平凡なサラリーマンで定年を迎えた父にそんな力もなく、佳枝はすぐに行き詰ってしまった。------------------