探偵日記 10月30日木曜日 晴れ
昨日は仕事で日光市(前は今市市)文挟というところに行って来た。知人が持っている土地の処分を頼まれたからだ。年に一回草をかってもらっているというが夏が過ぎた今、かなり伸びて、肝心の名札が見えなかった。それでも詳細な地図をもとに、場所を確認したが閑静で空気も清々しく、(ああ、こんな所で数日ゆっくりしたいな~)と思った。実は僕にもここと同じ静かに暮らせる家は有るが如何せん遠い。東京から片道1100キロだから、ちょっと帰ろうというわけには行かない。まさに、宝の持ち腐れ。である。紅葉は平地で見ごろなので、上はもう終わっているだろう。と思い、中禅寺湖までは行かなかった。午後、東京に帰って例のところに。(笑)この日も休肝日にして3日連続でアルコールを抜いた。長距離を走ったので疲れは残ったが、駅の階段で足のだるさは感じなかった。
今度の検査が楽しみである。恐らくかなりよくなっているに違いない。よし、今日はガッツリ飲もう。
娼婦 5
久しぶりに洋服も新調したので、85万円も1ヶ月足らずで使い切ってしまった。思案した佳枝は、今度は都心に行って別の金融会社を当ってみよう。と考え、余り土地勘の無い池袋に行った。すると、自分が住んでいる町と違って、有るはあるは見渡す限りけばけばしいサラ金の看板だらけである。嬉しくなった佳枝はとりあえず駅前のビルの3階に有る店を覗いてみた。ここも誰にも会わずに申し込める個室があった。佳枝は躊躇無くその部屋に入り、案内の音声に従って操作する。すると15分余りで30万円が手に入った。どうせ遠くまで来たんだから。と思い、次の店に入って、また30万円借りることが出来た。これで夫の年収の半分近く借りたことになるが、生来暢気で真剣にものを考えない佳枝は、余りにも簡単に金が手に入ったことで有頂天になって、ちょっと豪華なランチをし、デパートめぐりを始め、靴やブラウスなどを買い10万円余り使って帰宅した。
やがて半年が過ぎ、持ち金が乏しくなるとサラ金に駆け込みその場を凌いできた佳枝だったが、最近では何処の店も厳しくなって断られることが多くなった。前は、泣きつくと10万円位は貸してくれた三流店も、今日はけんもほろほろに断られ途方にくれて入った喫茶店でタバコを吸いながら呆然としていたあと、何気なく手にした週刊誌を読んでいると、(奥様の手軽なアルバイト)というキャッチフレーズが目に入り、続けて読んでいくと、昼間の数時間で3~5万円の収入となり、希望すればその日のうちに精算してくれるという。わらをも縋る。状況の佳枝だったから書かれてある番号に連絡し「面接」に来いといわれ行くことにした。電話に出た男性は、「いや~簡単な仕事ですよ。男性とお茶したり食事をするだけですから」と、優しい声で説明してくれた。
教えられた通りたずねてゆくと、マンションの一室で表札も無くちょっといかがわしい感じもしたが思い切ってノックすると電話の主が現われ愛想良く招じ入れられた。部屋は意外と広く別の部屋に女性が数人所在無げにしているのが見えた。(あの~急だったものですから履歴書を持ってこなかったんですが)と言うと、男性は笑って、「そんなものは要りません。ただ、貴方の身分を証明するものがあれば結構です」と言う。それなら充分有った。たった今サラ金に提出した保険証を見せると、「分りました。ちょっと自宅が遠いですね」と言ったが、続けて、「まあ、みんなそんなものか」と、口の中でもごもご言った。アルバイトの内容は、佳枝の都合の良い時ここに来て、出番がきたら出掛けて客の男性とコーヒー飲んだり食事すればいい。といういかにも簡単で楽そうなものだった。それで、2時間で15,000円以上になるという。佳枝は素早く計算してみた。すると、4時間で30,000円、6時間で45,000円、これを20日やれば90万円になる。(ぜひやらせてください)と言う佳枝を見て、男性は、「貴女なら引っ張りだこですよ」などとお世辞を言い、「じゃあ何時から来れますか」と聞いてきた。-----------------