探偵日記 4月6日月曜日 晴れ
毎度のことながら月曜日の朝は辛い。というのは、土曜日と日曜日タイちゃんの散歩を免除されているのでゆっくり寝ていられたが、月曜日はそれが再開されるからだ。今朝も5時に起きて1時間15分歩いた。朝食の後支度して事務所へ。10時10分前に着く。11時、帝国ホテルのロビーで地方から来る依頼人と打ち合わせ。長年の案件が片付く日である。
インターネット 2
依頼された内容はこんなものだった。某、上場企業の役員数名がターゲットにされ、ネットでいわれの無い攻撃を受けている。投稿者は「鉄腕アトム」というハンドルネームを使用。ただ、攻撃される方も事情があって、公に反論できない状況にあったし、仮に、(犯人)を特定できても表立ってどうこうするつもりは無いという。当面は。僕は、ネットの仕組みも分らなければ2チャンネルというものがどういうのかも知らない。したがって、調査方法も思いつかず指示も出せない。(どうせわからないだろうな)無責任のようだが正直なところそんな感じだった。依頼人(会社)にもその旨告げて受件するように言ってあった。担当者の方も「そうかもしれませんね。ただ、会社としてもほうっとくわけにもいかないので、まあ宜しくお願いします」と言う。大手企業というもの必ずと言ってよいぐらい警察のOBを迎えている。最近こそ、暴力団や特殊な圧力団体も影を潜め(少なくとも表向きは)ているが、かっては、そういう筋からの攻撃に備えていた。だから、今回の問題も、OBや法務部でしばしば会議されてきたようだ。そして、市井の調査会社に頼んでみよう。という結論に至ったようだ。
事務所では、依頼者側から提供された過去の資料を分析する一方、現在進行中の「裁判」を傍聴した。というのは、その企業が(公害)の元凶とされ、市民団体から訴訟を起こされていたからである。したがって、ネット上の攻撃も、裁判の進行状況に絡め、会社の信用を墜す様な内容に加え、役員個人のスキャンダルも含まれていた。名指しされた役員はもちろんのこと、その家族らもノイローゼになっているらしかった。投稿者は毎回裁判を傍聴しているはずだ。そう思って公判を傍聴していたある調査員が興味深い情報を持ってきた。------------------