探偵日記

探偵日記 6月16日火曜日 曇り

今日もプールに行って、11時に事務所へ。午後1時、麹町の弁護士事務所を訪問する予定。2年ばかりご無沙汰していたが、久しぶりに調査の依頼があるという。伊勢丹で、僕のお気に入りのお菓子を買った。

教師と教師 11

そのビルは地下鉄の駅前にあった。外壁がレンガでやや重厚な感じがするが築年数はかなり経っているように見えた。10階建てで、目的の探偵事務所は7階にある。小山内は、勿論、探偵事務所に行くなんて初めての経験だ。恐る恐るチャイムを鳴らすと、中から落ち着いた中年の女性の声で(どうぞ)と応答があった。中に入ると、すぐ左側にある応接室に通され、待つことも無く犬鳴氏が現われた。「どうも、遠い所を恐縮です」相変らず、慇懃な感じで言う。彼の手には分厚い冊子が。

事務員がお茶を出して下がるとようやく本題に入った。表紙に調査報告書と書かれた冊子が小山内の目の前に差し出され「まあ、内容はお一人になってからでもゆっくり目を通して下さい。調査結果についてはこれから私が口頭でご説明いたします。」それから犬鳴氏は、被調査人。すなわち自分の妻真理子が男性とラブホテルに出入した事実、男性の身元。等を簡単に説明してくれた。しかし小山内は、途中から、思わぬことを聞いた衝撃で混乱していた。妻の相手男性Sは、小山内を今の職場に世話をしてくれた恩人で、かって妻が勤務していた中学校の教務主任だった。確か今は別の中学校で教頭をしているはずである。年齢は確か妻より4~5歳上で、小山内と同い年のはずだった。

(犬鳴さん、ちょっと報告書を読んでいいですか)小山内は、Sの名前を聞き、もしかしたら同姓異人かもしれないと思ったからだ。犬鳴氏は「どうぞ」と言って、小山内の様子を窺うような目をしたが、読み終えるまで席をはずした。------------