探偵日記

探偵日記 7月22日金曜日 小雨

嫌いな雨だが涼しいのは助かる。今日で4日目、鍼灸院での治療は痛い。だけど、一日一日良くなっているような気がして、「明日も来れますか」と聞かれ、(ハイ来ます)と応じる。僕は薬も病院も嫌いではない。それに、決められたことはきっちり守る性格で、回復することを信じて疑わないから施術者もドクターも扱いやすい患者かもしれない。
僕は満72歳だが、そのことを言うとほとんどの人が驚く。特に、クラブのホステスなど「うっそうー、信じられない。まだ60そこそこかと思ってた」等と大げさに胡麻をする。若く見られてもさほど嬉しくはないが、若いころの同僚でたいそう老け顔の人がいた。或る時、彼が聞き込みに行った現場に、翌日僕が行った。話を聞いているとき、その主婦が「そういえば昨日探偵さんが来たわよ」と言う。僕は彼が来たことを知っていたが、初耳を装い(へ~どんな人)って聞くと、主婦は「う~ん70歳ぐらいのおじいさんだった」と言う。その日事務所に帰って、彼にそのことを言うと、チクショウあのババアに家に火をつけてやる。と、怒っていた。火をつけるはもちろん冗談で、怒ったふりなのだが、彼は当時40にもなっていなかった。探偵を50年もやっていると面白いエピソードは山のようにある。