探偵日記 12月04日火曜日 晴れ
今日は重要な予定があり気を引き締めて事務所へ。13時、新宿西口の喫茶店でご依頼人と面談。もう30年近いお付き合いでお互いの気心も分かりあっているはずだが、やはり神経は使う。15時、ホテルオークラで15年来の顧客の会社社長と面談。いってみれば、我がTDAの柱になるご依頼人。貧乏探偵事務所のTDAは顧客と言うか固定した依頼人や会社は少ない。原因は僕の怠慢で、宣伝活動を怠ったためである。田舎者で気が小さいからだろう、誇大な広告や、会社を大きく見せる「嘘」がつけない。ただひたすら、調査員の給与と事務所に維持費を賄うだけに労力の大半を費やした。それでも、これまでは、いい探偵稼業だったと思う。僕の手帳と頭の中には数万件の「事件」が思い出として残っている。
その1、「盗聴」
平成に入ったばかりのころ、何回か小さな人事調査を依頼してきた男がいた。名前はM。(なんだろうな?)得体が分からず少々警戒しながら応対していた。そのMが「うちのトップがお会いしたいと言っているので来ていただけませんか」と言う。初めて会ってみると、なかなか貫禄のある人で、こんな人を(偉丈夫)というのだろうと思った。年齢は30代半ば、185センチ、体重も100キロ以上はあろうかという大男で目力もあった。初対面の挨拶が終わって、実は、と切り出した話とは・・・・・・・・・・・・