探偵日記 04月12日金曜日 曇り
昨日より気温は低いが風がないのであまり寒さを感じない。現場に寄って11時過ぎ事務所に着く。早朝、11日から始まったマスターズを見たから少々寝不足。今日の天気のように頭がどんよりしている。
相変わらず何の成果も出ない現場、張り付いている調査員も辛いだろうが、依頼人に報告しなければならない僕はもっと辛い。これから書こうと思っている詐欺師になれないから身の細る思いである。
詐欺師K 1
昭和8年生まれ、名前はK。天皇と同じ年の生まれが自慢の一つ。僕が探偵になる少し前、アルバイトで入った会員制クラブの上司として知り合った。Kの住まいと僕のアパートが近かったこともあって、帰り道夕飯に誘われ、以来、子分にさせられた。Kはクラブを経営する会社の営業部長。僕は店がオープンするまでは営業員として働いていた。親しくなるにつれてKの素性も分かってくる。明大卒、元NHK職員でアナウンサーの経験もあるという。なるほど、それで口もうまいわけだ。と、僕は納得した。ずんぐりした体格で押し出しもいい。加えて、いい声で自信たっぷりにしゃべるからたいていの人はダマされる。
そのうち何か変だな~と感じるようになった。それとなく注意してみていると、金曜日あたりから何だかそわそわし始める。デスクに座って、周囲を気にしながら何か熱心に読んでいる。数人の部下もKを囲むように集まり面白そうにKの言うことを聞いている。あとで分かったことだがそれらは前職の元同僚だった。・・・・・・・・