探偵日記

探偵日記 02月15日土曜日 曇り

何時ものように07時に朝食を摂ったが、何時ものように外出はしない。毎晩飲んで肝臓もつかれているのだろう何となくけだるい。ということで、ベッドで横になり本を読んだり妄想にふけったりとまったり過ごした。そのうち、(ああそうだ、映画を見に行こう)と思い立ち、儀礼的に見張り番(奥さんの事)を誘った。(ねえ、映画見に行かない)「どんな映画」(韓国映画でパササイトってやつ)「ふ~ん、なんか暗そうな映画ね私は行かない」あっさり断られた。しかしこれも想定内。一人で行くことに決め、ネットで上映時間を調べ吉祥寺まで行った。吉祥寺オデオンに着くと3時05分は満席という。立ち見でもいいから。というが、お売りしていません。と冷たく言い放たれすごすご帰宅した。
仕方ないからまた本を読むか。居間で読み始めたが、それにもすぐ飽きた。本当に婚期が無くなった。まあ、明日のコンペに備えて体を休めよう。

新宿・犬鳴探偵事務所 2-15

犬鳴が提案した内容は、犬鳴が沙織の両親に会い、事情を話して協力してもらおう。というもので、要するに、古風な言い方だが、父(てて)無し子を産もうとしている娘に中絶するように説得してもらい、一旦郷里に連れ帰ってもらおう。という、虫のいいものだった。犬鳴にも娘がいる。もし自分の娘だったらどうするだろうか。仮に本件のような状況であればやはり娘を説得してそうさせるだろう。たしかに、依頼人たちも無傷というわけはに行かない「慰謝料」を負担することになるだろう。しかし、(だからといって消してしまえ)は言語道断だ。依頼人柳原夫人にしてみれば1円だって出したくないだろうがマルヒは別である。大人の男として、しかも立場のある人間として、(ゴメンナサイ)ではすまされない。もし、沙織の父親がヤクザの親分だったらどうか、子分に命じて何をするか分からない。犬鳴でも理性的に判断できないかもしれない。一方、マルヒの心情としたら(産ませたい)と思っているだろうことは容易に想像できた。妻と離婚しても、例え二人の子供を失っても。読者の方たちの判断も分かれるところだろうと思うが、その時点で、犬鳴もこれという上手い解決方法は思いつかなかった。しかし、依頼人夫婦を放り出すことも出来なかったし、ましてや沙織を憎むことも軽蔑することも出来なかった。
沙織に対する慰謝料は上限を1千万円ときめた。但し、交渉の推移によっては多少の増減は犬鳴に一任する約束もさせて、この日、工藤宅を訪問したのであった。・・・・