探偵日記


2022・11・08 火曜日 ☀




心機一転、今日から4作目の原稿を書く。タイトルは仮題。




何千分の一  (1)




今年、長いこと探偵の僕を使ってくれた人がガンで亡くなった。直接または関接的に、多種多様な調査を依頼された。その中には、今渦中の人「高橋治之」もその中の一人。目的は書かないが、やはり金絡みだった。昭和59年、僕は、JR新宿駅近くに僅か6坪の事務所を持っていた。持っていたと書いたのは、その狭い部屋をローンを組んで購入していたからだ。狭いながらも楽しい我が家。という歌の文句があったけど、僕の場合、狭いながらも自社オフイスだった。        そんなちっちゃな探偵事務所に、これもまたメチャクチャ小さい(名刺大くらい)タウンページの広告を見たという人がいきなりやってきた。名前はAさん、依頼内容は家出した妻の住所探し。勿論勤務先は分かっている。自分はとっても優秀な探偵だと自負している僕は、総額5万円で引き受けた。マルヒの写真を預かって勤め先から退社後を尾行すればいいだけの、言ってみれば(小学生でも出来る仕事)である。(分かりました1日仕事ですから5万円で結構です)と、大見えを切り、少し心配そうな顔で依頼人は帰った。翌日は25日の給料日「必ず出社するはずです」依頼人は言い、僕もそう思った。・・・・・・・・・