探偵日記

探偵日記 7月3日水曜日晴れ

03時半、廊下を隔てた向こうの部屋でタイちゃんの騒ぐ気配がする。(随分早いな~)と思ったが知らんぷりしていたら、04時過ぎにトイレに行きたくなった。そうなるともう逃げられない。案の上、トイレから出ると伏せをして待ち構えている。04時20分散歩に出る。勝手気ままに歩き回り大を6回した。まるで義務のように。

朝食の時、NHKのASAICHIで「悪徳探偵」というレポートをしていた。勿論捨てておけず最後まで見たが、要するに「探偵」を装った詐欺グループの話で、コメンテーターも、(真面目にやっている探偵さんが気の毒)だ見たいなことを言っていた。その手口とは、インターネットで詐欺に引っかかった人が、またインターネットのインチキ探偵に騙される。といったものだった。近年、便利ということで何でもインターネットを利用する傾向がある。僕に言わせれば(あれほど信用できないものは無い)と思っている。同業者に限って見ても(ホームページ)だけ見ると、業歴も無くほとんど一人でやっている事務所でも、数十人のプロの探偵が在籍し、豊富な機動力があるかのように作られている。この業界で40数年生きている僕でさえ、素晴らしく優秀な事務所かと錯覚をおこしてしまうぐらいだ。断っておくが、ネットの情報が何もかも不透明というのではない。例えば、病院やホテルなど公共性の高い施設を探す時等うってつけかもしれない。それらは誇大広告を行う必要が無いからだ。しかし、探偵社に限り(ネットを万能と思ってはならない)

では、「信用」に値する会社(事務所)かどうかを見定める基準はなにか? イ)所轄署に届けがなされているか ロ)事務所を訪問して、ネットで書かれているほどの規模か、業歴か、 ハ)正式な契約が可能か ニ)責任者の人柄はどうか・・・・まず自分の目で確かめて欲しい。仮に、当社は大手で、プロの探偵を沢山抱えているとか、もう何十年もやっている。などと宣伝していても、事務所を一目見れば、業歴の長さや大きさは分るはずだ。そして、絶対に前金を支払わないことが肝要である。探偵社の商品は「報告書」であり、正確な情報である。そうした商品を提出するまえに料金を求める事務所は大いに危険である。着手金はともかく全額支払うのは、依頼人の貴女が納得してからでいい。

怪しい探偵社 1

僕がまだ調査業協会のお手伝いをしていた頃、協会の事務所に一本の電話がかかった。当時は、協会員が当番を決めて留守番をして、調査に関係する相談や苦情を受け付けていた。これは、主管の指導によるもので、協会員の教育研修や苦情の処理を積極的に行うよう奨励されていた。この頃、月曜日が僕の担当で、朝10時から千代田区内の協会事務所に詰めていた。電話の主は世田谷区内の主婦で、「ある探偵社に娘の結婚相手を調べてくれるよう依頼したが、もう2ヶ月以上経っているにも拘らず報告してくれない」と言う。僕は、港区青山にある探偵事務所の名前や担当者を聞き取り、善処する旨伝えて電話を切った。

その業者は、協会の加盟員ではなかったが悪い噂は聞いていた。タウンページを見ると、当時青山に本店を持っていた(帝國データバンク)の近くに所在し、帝國000というふうに、見た人が(ああ、あの帝國か)と錯覚するような社名を名乗っていた。セコイのである。僕は早速その帝國何とかに電話をかけて事情を聞いた。すると先方はさも驚いたように「エッ00さんならとっくに報告書をお送りしていますよ」と言う。こちらも何ら権限を持たない立場であればそれ以上強くも言えず承知するしかなかった。くだんの主婦は「何度電話しても報告書を送ったの一点張りで、何時送ったのか聞くと、毎度決まったように数日前に送りました」と応えるらしい。しかし一向に届かない。娘は結婚する意志を固め、数日後相手の家に行く予定で、そのまま結婚生活に入るかもしれない。状況のようだった。

主婦は、「福田さん、いくら待ってもきりがありませんから、改めてそちらで調査して下さい」と言う。(でもそれじゃあ二重に調査料を払うことになって、もしうちで調査している間に報告書が届いたらお互いに困るでしょう)と言うと、「それでも構いません。あの事務所から報告書は来ないと思います」というので、僕の事務所で再調査することにした。調査地は北海道苫小牧市、調査料は飛行機代や宿泊費込みで100万円。したがって、依頼人の主婦(以後、母親と呼ぶ)は都合200万円を負担することになった。

今後のこともある。と思って、僕が調査することにして、翌日、全日空で千歳空港に向かった。一方、念のため、母親が赤坂警察に被害届けを出す。-------