探偵日記 05月01日土曜日
まったく仕事にならず4月が終わり、今日から5月。しかし、政府は向こう1ヵ月今の状況を継続するという。確かにコロナに対してはそれでいいかもしれないが、経済の悪化で命を奪われる人たちのことは考えてくれないのか。今日買った週刊誌の特集で、2・3月の自殺者はゆうに3000人を超えている。そのうち、けいざいめんでいきづまって亡くなった人はこれまでコロナで亡くなった人を大きく上回るという。一時9000人を超えたがこのところ年間4000人ぐらいで収まっているが、こうした状態が続けば5000人を突破するのも時間の問題らしい。自営業、零細な会社は持ちこたえられない瀬戸際に来ている。勿論、我が貧乏探偵事務所も例外ではない。晩年になり終活を噛んっが得る時期に思いもよらぬ苦難に遭遇するなんて。・・・・
新宿・犬鳴探偵事務所 5-1
ボーイに導かれて僕たちの席に加わった女の子。実は犬鳴は良く知っている女性である。なぜならば、日々、調査員の報告書に添付されている写真や住まいの様子などで熟知しているといっても大げさではなかった。僕の横に座った彼女に(君はなんて名前なの)とわざとらしく名前を聞く。「タカコです」と言う。(へえ~そうなんだ僕のいとことおんなじ名前だ。奇麗だね)と持ち上げて見せる。褒められて怒る人はいない。ましてや女性にとって(美しい)と称賛されることは至福であろう。乾杯などした後、他のものに聞こえないように(タイプだよ)と囁く。
その後、小一時間留まり、友人に(じゃあそろそろ行こうか)と言い、タカコに(おあいそ)と頼み、ボーイが恐る恐るといった感じで勘定書きを持ってきた。犬鳴は内心(結構高いもんだな)と思ったがそんなことはおくびにも出さず現金で払い、席についている女の子全員に1万円づつ(ラーメンでも食べなさい)と言って渡した。さらに、ボーイに(車を拾ってくれ)と言って、タクシーを探してくれた彼に2万円ちっぷをわたす。これで、この店は犬鳴のことを忘れないだろうし、女の子たちも(犬鳴をゲットする争いの幕を切るはずだ)当時はバブルの真っ最中。ぼんやり外に出ても決してタクシーは拾えなかった。犬鳴こと(広告代理店の佐藤営業部長)の内偵調査が始まった。・・・