平成不倫考 2

探偵日記 2月3日月曜日晴れ

ここ数日暖かい日が続き寒がりの僕は大歓迎。ただ、今日の午後から大寒波が南下し猛烈に寒くなるとか、まだ子供の頃、節分の今日は家庭で豆まきをしたものだ。今はそんな行事を行う家庭は稀だろう。時代の移ろいと共に、古き良き慣習が廃れ行くのは淋しい限りである。それと共に人の心も潤いが微かとなって自己中(虫?)ばかり。まあ、僕もその一人かもしれないが、それでも、小さな生き物や草花を愛でる心は残っていると思う。NHKで、ダーウインガやってきた。という番組があり、動物の自然社会を見せている。普段滅多にテレビなんか見ない僕だが、行きつけのお寿司屋さんのテレビだけはなぜか見てしまう。ゴルフや、野球ならば頼んででもチャンネルを変えてもらう。昨夜も、ちょうどダーウインが放映されていた。なるべく見ないようにするのだが、つい目が行ってしまい狼が他の動物を襲う場面を見てしまった。大人を襲う時はグループでやるが、子供も狙う。途中で親が気づき狼を追い払ったが子供は半死の状態である。それでもその親は、朝まで付き添い、やがて諦めてその場を離れた。そうすると、どこかで待っていたのだろう。狼が戻ってくる。そんな切ない番組を見ながら、美味しいお酒を飲み、美味しいお寿司を食べて2月2日が終わった。


平成不倫考 2

昭和の終わりだったか、或いはもう平成になっていたか、夫に対する素行調査の依頼が入った。勿論依頼人は妻。マルヒの夫はサラリーマンで都心の会社に勤務していた。年齢は40歳。働き盛り、男盛りである。依頼人から預かった写真を見るとなかなかの男前(今風に言えばイケメン)背も高かった。依頼人の奥さんもまあまあの美人、子供も二人居た。調査はあっけなく終わり、じゃあどうするか。という場面に移行したが、依頼人はあっさりしたもので、マルヒの夫に有無を言わさない形で離婚が成立した。形ばかり弁護士が入ったが、分与する資産もなく、相手の女性に慰謝料の請求もしなかった。当然ながら、まだ乳幼児の二人の子供の親権は妻のもの。驚いたことに、子の養育費も一切要らないという。夫は何とか離婚を回避したい様子だったが、妻は、(私以外の女性と肌を合わせた人とはもう暮らせない)と、断固とした感じで母一人住む実家に戻っていった。余りの清さに少々不安を感じた僕が、(奥さんもう少し考えてみたら、貴女はそうでも子供達がもう少し大きくなったら父親を必要とするかもしれないし、今後の生活のこともあるでしょう。)とアドバイスしたが聞き入れてもらえなかった。

依頼人は、それまで住んでいたアパートをさっさと引き払い、一人をおんぶし、もう一人の手を引いて、確か常磐線だったか急行に乗って郷里に帰ってしまった。それから数日して、連絡する必要が生じ実家に電話すると不在である。夜もう一度かけると母親が出て「急病で入院しました」という返事だった。もう詳しくは覚えていないが、何かお見舞いを送ったと記憶する。さらに1ヶ月ぐらい経っただろうか、突然その依頼人が事務所に現われ、お見舞いのお礼かたがた。と言って近況を聞いた。病気は内臓の不調だったようだが、相当酷い状況だったとかで、笑いながら「死ぬかと思った」と言っていた。あの時、何の憂いも見せず気丈に振る舞い、夫の(考え直してくれ)という哀願を、(男のくせになんて女々しい)と嘲笑っていたが、やはりギリギリの踏ん張りだったのだろう。と思い、僕が、(やっぱり辛かったんでしょうね)と問うと、「福田さんにも女の気持ちが理解できないことってあるんですね。そうじゃあないんです。私は、あの夫が子供達の父親であることも承知できないんです。私と子供達は一心同体で切っても切れませんが、夫とは血縁すら感じられないんです」彼女に言わせれば、子供を授かる際、確かに男性の協力を得たが、それだけのことだ。本当に繋がっているのは母親の私と子供達。ということなのかもしれない。

その時は、(変わった人だな~)と思った僕だが、あれから25年経ち、子供達も随分大きくなっただろう。僕も、今では何となく彼女の気持ちが理解できるようになった。それは女性の強さとか、その人の思考の問題とかでなく、動物的な男女の相違かもしれない。あと100年、否、数千年先かもしれないが、人類は女性ばかりになるという。我が国の少子化は決して国のせいではない。男子が本来の男子らしくなくなっているのが最大の原因で、(種族を残す)精神も体力も劣化しつつあるのだと思う。医学の世界では、将来、オスを必要とせず、メスの子宮も必要なく子供創造できるらしい。但し、そうして生まれてくるのは100パーセントメス(女性)という。昨今、夫に不倫された妻は悲壮感無く離婚に臨む。もう、男性との交わりはゲームになりつつある。