平成不倫考 6

探偵日記 2月6日木曜日晴れ

連日の飲酒がたたって寝起きが悪い。それと、このところ気分を害することもあり、全体にバイオリズムが低下しているのかもしれない。自分では精神面はタフなほうだと思っているが、案外、気づかないところにストレスが溜まっているのかもしれず、それでアルコールに走っているって事も考えられる。僕としては、このブログで発散しているつもりだったが、昨今、人の日記を誰でも読める時代だから、当然ながら、非難や誹謗もある。最初に、ブログを始めようとした時、娘が読者のコメントを拒否する設定をしたことは正解だった。仮に、第三者が僕のブログを読んで喧嘩を売ってきたら、徹底的に応戦するだろう僕の短所を知ってのことだ。感謝。なんでも長続きしない僕が、2年以上書き続けてこられたのは、一つには、娘の、事務所の宣伝になる。という言葉と、将来、出版にこぎつけられるかどうか判らない散文を書き溜めておこう。という淡い期待もある。但し、職業の性格上、(暴露記事)と取られかねない危険もある。僕なりに、シチュレーションを変える努力はしているつもりだが、場合によっては、わざと名誉毀損で訴えられ、公の場で是非を問いたいものもある。昨日まで3回に分けて書いたMのこともそうだ。文句を言ってこられないだろうが、仮に現われればこの際だからけりをつけてやろうとも思っている。


平成不倫考 6

ある夫婦の話。共に40代半ば、職場結婚で二人の子をもうけ、10年余りは順調に生活したが、ある時から夫の様子が激変した。住まいは3LDKの団地。各部屋は夫婦と子供達一人ずつに分けて暮らしていたが、或る日、夫から「悪いけど一人で寝たいから君は別の部屋に移ってくれないか」と言われた。妻は、(別の部屋って言ったってそんな部屋無いじゃない)と抵抗したが、「それなら俺が出る」と言われ、それじゃあ困るので、リビングを間仕切りして自分の部屋にして凌ぐことにした。すると、次は、会話を避けるようになり、夫婦のコミニケーションが絶えた。最低限のやりとりは、大学ノートでの交換日記ならず、(伝達)となった。当然のことながら子供達の知るところとなり、(二人の子供とは会話をするが)ギクシャクとした雰囲気となってしまった。

或る日、夫の下着を洗濯しようと思い、今まで一緒だった部屋に入ろうとして愕然とさせられた。なんと鍵が掛けられていたのだ。そうするうち、夫から(離婚の調停)が提出され、家庭裁判所で夫の言い分を聞いてみると(性格の不一致)という。愛し合って結ばれ、二人の子をもうけた男女が十数年を経て、なにお今更だが、僕の依頼人となった妻は極めて常識的で、しっとりとした優しさを感じる人だった。「夫に女性が出来たんだと思います」という依頼人に同意しながら、(もしかしたら違う理由かもしれない)と思いながら、早速調査に着手した。美男美女という形容がピッタリの夫婦で、妻も松坂慶子似の綺麗な人だったが、マルヒも島耕作ばりの良い男だった。------