平成不倫考 7

探偵日記 2月7日金曜日晴れ

昨日に比べ今日は比較的暖かく感じる。それと、酒を抜いたので目覚めも良好。それでも、うだうだして、事務所に着いたのは正午。しかし、明日の朝から関東地方は大雪の予報。もし本当に雪が降れば、9日の月例は無くなり、3,4月も他の予定とバッティングするので、リベンジは5月12日までお預けである。まあ、寒さに弱い僕にとっては、かえって好都合かもしれない。雪が降ったら休養日にして老体の手入れでもしよう。(笑)


平成不倫考 7

通常、離婚調停は3,4回で終わる。大概不調に終わり、申立人がどうしても離婚を望むなら裁判に移行する。昔は、離婚7年などと言われ長引くものとされていた。そして、浮気をした夫からの訴えは門前払いになることが多かったように思う。しかし、年は移ろい、平成ともなれば、裁判官の考えも大きく様変わりして、(すでにこの夫婦は形骸化している)と判断されれば、あっけなく「離婚」を認める判決が出ることも珍しくない。僕が調査した中にも、不倫を働いた夫の求めをあっさり認めたケースが有った。(自分が如何に貧乏か)を、巧みに演じ、裁判所がこれを信じたのだが、例えば、夫の生活実態は、超高級マンションに愛人と住み、会社は高収益を上げ、暇さえあればその愛人と海外旅行に出掛けていたのに、一方で、実際に住んでも居ないアパートを借り、住民登録をして、裁判所を欺いていた。僕の事務所では、夫が愛人を乗せてマンションをベンツで出掛け、成田空港からヨーロッパに向かう姿や、アパートの公共料金を示し、居住の実態のないことなど反証する報告書を提出したが、結果は(嘘つき夫のデタラメ)が採用された。このときの妻側の弁護士さんは、非常に穏やかな人で、一方の弁護士は極めてバイタリティーに富んだ人だったように記憶する。

話が横にそれたが、本件の夫婦も、被告にされた妻に全く落ち度が無いので、長期にわたったが、その間の出来事として、夫は、かなりの高給取りにも拘らず、生活費は、団地の家賃半額と子供教育費だけしか出さない。食費は、「俺はお前の作ったものは一切食べていないのだから支払う義務は無い」と言い張り、どうかすると、公共料金の類も無視して逃げようとした。二人居る子供のうち、中学生の長女が、スポーツで、全国大会にノミネートされるぐらい優秀だった。ある時、その長女が地方の大会に遠征することになって、妻が、伝言メモに(長女のための費用を出してあげて)と書いたところ、なんと、夫は所轄警察に駆け込み「妻に金を出せと脅迫された」と訴えたものである。担当した刑事は唖然とし、妻からも事情を聞いたが、結論は、(夫婦でもう少し良く話し合ってください)で終了した。(法は家庭に入らない)時代でも有ったが。

この夫婦は、まだ離婚していない。家庭内別居ももう10年以上経つ。調査の結果、夫に女性の影はなかった。------------