探偵物語 4

探偵日記 7月5日土曜日 雨

昨夜は早く寝たのに5時タイちゃんに起こされる。雨の中散歩。今日は30分以上歩く。ご飯を食べた後、早々にしたくして事務所へ。

探偵物語 4

当時の僕は探偵を気取ってても実力は無かった。ただがむしゃらに仕事をするだけで、失敗も多かったように思う。そうするうち、少しづつ業界全体が見え始め、自分の事務所の位置なども判ってきた。仕事は東京探偵事務所から回してもらう案件が半分、自社の広告で入る新件が半分といった割合で推移。やがて100パーセント自社の仕事で経営し、調査員も1人2人と増えていった。昭和53年、新宿駅近くの大ガードそばに出来たワンルームマンションの1室を1270万円で購入した。それから10年余りで、たった5坪の部屋が7500万円で売れようとは、当時は夢にも思わなかった。引き受ける仕事の規模も次第に大きくなり、(この仕事で食っていけそうだ)と、多少自信めいたものを感じた頃でもあった。

そんな或る日、電話帳を見たという男性から「調査をお願いしたい」という申し出があり、銀座迄出向いたのだがこれがその後、新聞やテレビを賑わす詐欺事件に発展するのだった。-------