探偵日記

探偵日記 4月21日火曜日 曇り

昨日は麻雀で大敗した。昔、その頃有名だった雀プロからサインして貰ったが、色紙に「福田さんマージャンは負けたり勝ったり」と書いてあった。勝ったり負けたりではないところに、その道の先達の奥の深さを見た。一緒に卓を囲み、終わってから彼の行きつけのバーで飲んだが、鶴田浩二の「赤と黒のブルース」を歌ってくれた。なかなか味のある唄い方で、若かった僕は感激したものだ。それから30数年、相変らず、負けたり、時々勝ったりの麻雀をやっている。

Mという女 6

もうSという客のことは店でも有名になり、彼から指名が入ると、同僚達は「ほら、Mちゃん彼氏からデートの誘いだよ」などと冷やかされる始末。Mも決して悪い気はしなかったが、あまり嬉しそうな顔をするわけにもいかず(あ~あ、嫌になっちゃう。また指導しなくちゃあならない)などと言って、顔をしかめて見せる。すると、或る日のこと、同僚の子が「Mちゃんこれを彼氏に見せたら」と言って一冊の本を渡してくれた。見ると(セックス教本)というタイトルが付いている。へ~こんな本があるんだ。と感心しながらホテルに急いだ。

Sは、仙台に住んで居て、時々出張で上京する。と言っていたのに、あれから毎日、もう2週間経つが一日も休まずMに会いに来る。まあ、こんなところに来る客の言うことだから必ずしも本当のことを言っているとは限らない。Mも深く詮索しないようにしていた。最近は、3時間経つと一旦店に帰り、偽名で電話をかけてくるSとまた3時間過ごす。ことの繰り返しで、丸一日Mの相手をするだけで終わった。或る日のこと、行為が終わって帰り支度を始めたMに、ベッドの中からSはこう言った。「Mさん、僕は貴女が他の男とこんなことをして欲しくない。この仕事を辞めてくれませんか」Mは(嬉しい)といいながら、ひしとSにしがみつく。しかし、頭は冴えていた。

家路に向いながら、再びSの言葉を反芻した。(自分だけのものになって欲しい)そういえば、これまで何度か男に同じようなセリフを言わせた。3度の結婚相手以外にも、数多くの男性遍歴の中であと数人いる。だけど、この商売を始めてからそんな言葉を聞くことはなかった。ホテルに女性を呼ぶ男はただただセックスが目的で、それ以外の何ものも望まない。1、2時間遊んで帰って行く。稀に、自分のことを気に入ってくれて裏を返す客もいるがSのような男は初めてである。否、Mの人生の中でも初めてかもしれない。(よし、ひと勝負してみようかな)------------------