探偵日記 8月12日水曜日 曇り
新宿一丁目にある事務所の上空、不気味な雲がかかって、今にも豪雨が来そうだ。10時半、所用を済ませてちょっと事務所に立ち寄る。僕自身はもう夏季休暇に入っているが、まだ現場で張込を続けている調査員も居る。僕も今夜10時に銀座でご依頼人と会う予定が入っている。探偵は何事も無く長い休みは取れない。個人的には、カルチャースクールで課せられた宿題もあって、とても(のんびり)というわけにはいかない。
れんげ 27
良く、洋犬はおしゃべりで、和犬は言葉少なで目で語る。と言われるが、犬も人間以上に喜怒哀楽が激しく、笑うときなど、目を大きく見開いて舌をぐんと出す。また、人間は、犬の言葉をほとんど理解出来ないが、犬のほうは、かなりの精度で人の言葉を理解するようだ。
ひかるに、「れんげ」と呼ばれた茶々は、目をキラキラさせ満面に喜びを現した。つい数ヶ月前、わが子と一緒に暮らした野山で、自分達にとても優しくしてくれた人が居た。その人は、そうだ、自分のことを「れんげ」って呼んでくれた。美味しいごはんも沢山くれた。今目の前に居る人は、もしかしたらあのときの人かな。ううん違う。あの人の声はもっと強く大きかった。でもどうして、ママは自分がれんげって分ったんだろう。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー